減少に転じた2000年のアルゼンチン生乳生産


生産量は再び1千万キロリットルを下回る

 アルゼンチン農牧水産食糧庁(SAGPyA)がとりまとめた報告書によると、2000
年の生乳生産量は、前年比7.1%減の960万キロリットル(暫定値)となった。

 同国の生乳生産量は、施設の近代化や加工処理能力の拡大などを背景として、
92年以降一貫して前年を上回って推移し、99年には1,033万キロリットルと過去
最高を記録し初めて1千万キロリットルに達した。しかし、生乳生産の増加によ
り供給が過剰となったことから、99年に生乳価格が急落し、収益の悪化を嫌った
酪農家が相次いで廃業するケースが増加した。SAGPyAでは、2000年の生乳生産
量が減少に転じた理由として、このような離農の増加によるところが大きいとみ
ている。このほかにも、現金収入の減少により穀類などの補助飼料の利用率が低
下したことや、同年11、12月の降雨量が例年に比べ少なかったため、牧草の収穫
量の減少や品質の低下を招いたことなども生乳生産量減少の要因として挙げてい
る。

◇図: アルゼンチンの生乳生産量の推移◇


生乳販売価格は99年に続いて低水準

 同国の主要酪農地域であるサンタフェ州の生乳価格(乳業メーカーによる生乳
1リットル当たりの生産者支払価格)の推移を見ると、99年に前年比20.0%安の
14.3セント(約18円:1ドル=127円)と大幅に下落し、2000年も14.6セント
(約19円)と低水準で推移した。

 月別に見ると、99年9月から2000年2月までは13.0セント(約17円)で推移
したが、SAGPyAによると、この価格は生産コストとほぼ等しい水準とされる。ま
た、2000年7月の生乳価格は、16.0セント(約20円)まで上昇したが、10〜12
月では、国内の景気低迷や輸出量の減少による影響で、14セント(約18円)台で
推移したため、酪農セクターに新たな危機を招いたとしている。

◇図:生乳販売価格の推移(サンタフェ州)◇


牛乳・乳製品輸出の7割を占めるブラジル向けが大幅減

 2000年における牛乳・乳製品の輸出量については、前年比19.4%減の17万4千
トン(製品重量ベース。ただし、牛乳は粉乳換算ベース)となった。減少要因と
しては、乳業メーカーが、生乳生産量の減少による原料不足から国内市場のシェ
アを失わないため、輸出市場への供給を手控えたことや、全輸出量の約7割を占
めるブラジル向けが、自国の生乳生産量の増加などにより、前年比24.9%と大幅
に減少したことなどが挙られている。SAGPyAでは、ブラジル向け輸出が減少する
一方、アルジェリア、メキシコ、キューバなど新興市場向けのシュア拡大に期待
が寄せられるとしているが、アルゼンチンの国内需要が比較的堅調に推移する中、
同国が輸出を拡大するには、生乳生産量を少なくとも1千万キロリットルに保つ
ことが条件となるとみている。

◇図:アルゼンチンの牛乳・乳製品の輸出量◇


生乳生産量は2001年も前年実績を下回る見込み

 2001年1〜4月における主要乳業メーカー17社の生乳取扱数量(全国の生乳生
産量の約60〜65%に相当)は、176万キロリットルと前年同期比6.7%減となった。
これは、夏季の記録的な猛暑により経産牛1頭当たりの乳量が減少したことや、
同国パンパ地域で口蹄疫が発生したため、口蹄疫の感染牛や感染の疑われた牛を
生産ラインから外したことにより酪農家1戸当たりの乳量が減少したことなどが
要因として挙げられている。SAGPyAでは、2001年の生乳生産動向について、春季
(9〜11月)には降雨量が比較的多く牧草の生育状態が良好となることから生乳
生産量の回復が見込まれるものの、通年では前年比5.2%減の910万キロリットル
と2000年に続いて前年を下回ると予測している。

元のページに戻る