遺伝子組み換え技術法施行(豪州)


半年間の検討を重ねて施行へ

 豪州連邦政府は6月21日、すべての遺伝子組み換え(GM)作物などを規制する
遺伝子技術法(Gene Technology Act 2000)を施行した。この法律は、昨年12
月8日に上院で可決されたが、内容が不十分とする野党の要請により、具体的内
容について検討を重ねた結果、約半年の期間を経て施行された。

 この法律の具体的内容は、

@ 遺伝子技術規制官(GTR)の設置(会計検査官と同等の強い独立性と権限を
 持つ官職)

A GTRの諮問機関として科学委員会(遺伝子組み換え諮問委員会(GMAC)から
 移行、科学的な見地から専門的なアドバイスを行う)、倫理委員会(倫理上の
 ガイドラインの設定についてアドバイスを行う)および共同委員会(政策ガイ
 ドラインの決定)の設立

B 研究、製造、生産、販売、輸入などでのGM作物の取り扱いの禁止(GTRの免
 許を得ている場合、届け出により取り扱いができる低リスクなもの、GTRの作
 成するGM作物登録簿に記載されたもの、取り扱い禁止の適用除外とされたもの、
 を除く)

C 人体および環境に対する遺伝子組み換えの危険度の評価(一般市民の遺伝子
 組み換えについての認識の確立対策を含む)

D 同法の順守状況の調査

E 豪州で認可されているすべてのGM作物などのデータのインターネットなどで
 の一般公開

 となっている。

 また、同法の違反者には、最高で罰金110万豪ドル(約7,150万円:1豪ドル
=65円)、もしくは10年以下の禁固刑が科せられるという厳しいものとなっ
ている。


懸念されるデータ公開の免除規定

 その一方で同法には、危険度が小さいものや商業上の秘密保持の必要があるも
のは、GTRに認められれば、データの公開を免除される規定も設けられており、
法律の抜け穴となることが懸念されている。

 今年2月には、GM作物の実験栽培などを州の法律に基づいて禁止しているタス
マニア(TAS)州において、一部実験素材の取扱方法がこの時点では暫定機関で
あった管理組織のガイドラインに違反したとして、栽培実験を行っていた大手農
業科学研究会社が摘発を受けた。栽培実験の事実さえ把握していなかったTAS州
議会は、その実験地などの公表を求め追求したが、その時点では公開させるため
の権限がないとされ、公開を見送った経緯がある。企業からのデータの非公開申
請は7月6日に締め切られ、GTRが90日以内にその申請を認めるかどうかを審査
するとしており、その行方が注目されている。

 今回の法律の施行により、注目されているGM作物などについて、研究、生産、
販売のルールが示されたことになり、今後、各州ごとに法制化されて行くことと
なる。

 なお、昨年7月に豪州、ニュージーランド食品基準協議会(ANZFSC)が決定し
たすべてのGM食品に対する表示義務規制は、2001年12月に施行されることとなっ
ている。

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