マッシュルーム・チェックオフ違憲判決、畜産部門にも波紋(米国)


広告の反対者にも課せられる賦課金が表現の自由の規定に違反

 米最高裁判所は6月25日、マッシュルームのチェックオフ制度に基づく取扱業
者からの賦課金徴収について、違憲判決を下した。同制度は、マッシュルーム取
扱業者から徴収した資金を、マッシュルームの消費拡大を目的とした一般的な広
告などに利用するもので、同様の制度が牛肉、豚肉、酪農製品、卵、果実、綿花
など多くの農畜産物で実施されている。

 今回の裁判は、マッシュルームの取扱業者であるユナイテッド・フーズ社が、
自社商品との関係でこうした広告に反対を唱えている場合でも、賦課金の支払い
が義務付けられることは、憲法修正第1条に保障された表現の自由に反するとし
て、国を相手取って起こした訴訟に端を発している。


包括的な規制下での協調ルールに基づく賦課金徴収ならば合憲

 米最高裁判所は判決要旨の中で、政府が望む表現方法に対し、国民に資金提供
を義務付けることが可能となれば、表現の自由が保障されなくなるとして、同社
の訴えを支持した。一方、米最高裁は97年、カリフォルニア州における果樹作物
(桃、プラム、ネクタリンなど)の同様の制度については、合憲との判断を下し
ている。

 今回の判決では、果樹作物の場合、マーケティング・オーダー制度などの出荷
規制を含む包括的な措置の一環として、生産者が協調的なルールに基づき、一般
的な広告に賦課金を支出することには妥当性があるものの、マッシュルームにつ
いては、生産、出荷の決定に関する規制がないため、協調して行動する必要性も
ないという両者の違いが強調された。

 ベネマン農務長官は今回の判決後、チェックオフ制度に関する対応策を練るた
め、判決内容の検討に着手したことを明らかにした。同長官は、同制度が引き続
き農産物の市場拡大に重要な役割を担っているとコメントしたが、個別農産物の
チェックオフ制度への言及は避けた。


活気付くチェックオフ反対団体、牛肉ボードはマッシュルームとの違いを強調

 豚肉チェックオフ制度の廃止を求め、米農務省を相手取って訴訟を起こしてい
る「家族農家のためのキャンペーン(CFF)」などの団体は、今回の最高裁判決
を歓迎するとともに、本判決がマッシュルーム同様、広告に多くの資金が費やさ
れている豚肉や牛肉のチェックオフ制度などに与える影響は甚大としており、今
後、これらの団体の運動がさらに勢いづくものとみられる。

 一方、肉牛・牛肉部門のチェックオフ制度を担当する肉牛生産者牛肉振興調査
ボード(CBB)は声明の中で、判決内容を分析中であるとした上で、今回の判決
と一線を画すべく、

@ マッシュルームの賦課金は取扱業者が対象であるため、一般的な広告よりも、
 各取扱業者は自社商品を広告することを好む傾向にあるが、牛肉の場合、主と
 して生産者が賦課金を支払っており、一般的な広告により、牛肉の需要が全体
 的に増加し、各生産者が利益を得ることが可能であること

A マッシュルーム業界と異なり、牛肉業界は連邦政府による検査、格付けその
 他の規則の対象となっていること
 など、マッシュルームの制度などとの違いを挙げた。

 これに対して一部の専門家からは、最高裁が合憲の判断材料として言及してい
る規則は、マーケティング・オーダー制度のような包括的なものであり、こうし
た制度を有しない牛肉や豚肉の業界はマッシュルーム業界に近いと指摘する声も
上がっている。

 現在、牛肉チェックオフ制度に基づく賦課金徴収の禁止とその合憲性の判断を
めぐり、サウスダコタ州の米連邦地方裁判所では、家畜マーケティング協会(L
MA)などチェックオフ制度に反対する団体を原告とする訴訟の審理が行われて
おり、数年後にはマッシュルームの案件と同様、最高裁まで持ち込まれるとの観
測も流れている。

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