EUの牛肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○順調な回復を見せる域内の牛肉消費


消費水準は6%減にまで回復

 昨年10月末にフランスで発生した、牛海綿状脳症(BSE)感染の可能性が
ある牛から生産された牛肉の販売に端を発した、新たなBSE問題の再燃・拡大
は、EUの牛肉消費にも大きな影響を及ぼすこととなった。一時期、主要牛肉生産
国であるドイツでは、牛肉消費が通常期と比較して4割も減少するなど市場は混
乱し、畜産全体に大きなダメージを与えていた。また、加盟各国でも、牛肉消費
の減退や価格低下など同様の事態が見られた。しかし、その間に実施されたEUの
各種対策や、各国政府によるさまざまな取り組みにより、牛肉の消費は順調な回
復を見せつつある。10月23日に開催されたEU農相理事会の席で、フィシュラ
ー委員(農業・農村開発・漁業担当)から最近の牛肉市況について報告がなされ、
EU15ヵ国全体の消費水準(消費量)は、前々年同期と比較して約6%の減少ま
で回復していることが明らかとなった。これは今年5月時点の水準と比較して、
3ポイント以上の改善となっている。

EUの牛肉消費量(BSE問題再燃以前の水準との比較)

 資料:EU委員会


牛肉介入在庫量は24万トン台に

 EUでは、新たなBSE問題の再燃以来、牛肉の介入買い上げを始めとして、
さまざまな対策を実施してきた。現在の牛肉介入在庫量は15ヵ国合計で24万
トンを上回っており、99年以来の高水準となっている。また、この間に行われ
た特別買上制度(各国別に廃棄も可能)では、8万8千トンを超える牛肉が別途
買い上げの対象となった。そのほかに実施された廃棄のための買上などの対策も
含め、EUの年間牛肉消費量の約1割弱に当たる合計で約75万5千トンの牛肉が
市場から排除された。現在の牛肉介入在庫量について国別の数量を見ると、牛肉
消費の低下による価格暴落の影響を受けたドイツ、フランス、スペイン、イタリ
アの在庫が目立っている。

牛肉介入在庫量(各国別:10月現在)

 資料:EU委員会


2001年の年間消費は10%の減少と予測

 2001年度の年間牛肉消費について、EU委員会のフィシュラー委員は、消費
水準の回復が順調なことから、前年と比較して10%程度の減少にとどまるもの
と予測している。BSEおよび今年2月のイギリスでの発生を皮きりに拡大した
口蹄疫による危機から、ゆっくりではあるが着実に回復してきたものといえる。
一方、需給に大きな影響のある牛肉の域外輸出については、BSE問題の影響など
を背景に通常期の7割程度にとどまっている。しかし、中東地域の主要輸出先と
なりつつあるレバノン、また、EU最大の輸出先であるロシア向けを中心に輸出は
回復傾向にあり、主要な輸出先の1つであったエジプト向けも、EUからの輸入解
禁に向けた動きを見せるなど、消費、輸出両面にわたり改善が期待されている。

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