タイの鶏肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○ブロイラーの卸売価格が急騰


卸売価格、3年間で最高値を示す

 バンコク市場におけるブロイラー(生体)の卸売価格が急騰している。タイ農
業協同組合省が発表した7月のブロイラー1kg当たりの卸売価格は、前年同月比
23.7%高の34.6バーツ(約97円:1バーツ=2.8円)となり、この
3年間で最高値となった。

 近年の卸売価格は、景気後退の中における生産過剰の影響で99年の9月から
10月にかけて暴落し、その後持ち直したものの低水準で推移していた。しかし、
今年に入ると、牛や豚に発生した疾病の影響で、ブロイラーの需要が高まる欧州
を中心に輸出需要が増大したことにより、4月以降は急激に上昇している。

 最近の堅調な生産は輸出需要の急増に大きく依存しているが、今後の輸出の先
行きはそれぞれの輸出先国におけるブロイラー需給に左右されるため不透明であ
り、卸売価格の低落の懸念も完全には払しょくできないものと思われる。


同様の傾向で推移する農家販売価格

 卸売価格の影響を大きく受ける農家販売価格も同様の傾向を示しており、7月
は前年同月比22.6%高の32.3バーツ(約90円)と大幅に上昇した。こ
れは、卸売価格の高騰が養鶏農家の生産意欲を刺激した結果、生産費の多くを占
めるひな費などの上昇を招いているものと思われる。ひな費は4月以降、前年同
月を上回って推移しており、7月(1羽当たり)は前年同月比27.9%高の1
0.4バーツ(約29円)となっている。

 また、長引く景気の低迷で国内需要の伸びが望めないことから、抗生物質の代
わりに高価な薬草を用いたり、飼料に動物性残渣を添加しないなど海外の消費者
の嗜好に配慮した生産者も現れている。こうした海外市場のニーズを念頭に置い
た高コストの生産が行われつつあることも価格上昇の一因になっているものと思
われる。


小売価格も急騰、97年の水準へ

 一方、ここ数年は大幅に変動することのなかった小売価格も急激な上昇を見せ
ている。小売価格は96〜97にかけてピークを迎え、その後は一貫して低下傾
向で推移しており、ブロイラーの供給量が増大する中で99年9月以降は前年を
下回り続けた。しかし、増大する輸出需要にけん引された卸売価格の大幅な上昇
は、小売価格にも大きなインパクトを与え始めている。2001年6月のバンコ
クにおけるブロイラー1kg当たりの小売価格は、前年同月比7.1%高の51.
6バーツ(約144円)とかなりの程度上昇し、一気に97年の水準にまで急騰
した。小売価格はその後も上昇を続け、7月も同8.6%高の52.6バーツ
(約147円)と97年以来の52バーツ台に乗せている。

 しかし、小売価格は長期にわたり低水準で推移してきただけに、こうした傾向
が続けば将来的に消費者の鶏肉離れを誘発する懸念もある。国内需要が停滞する
中で海外需要への依存を強めつつある同国にとって、輸出にブレーキがかかった
場合の受け皿となる国内需要を維持することは重要と思われる。

◇図:ブロイラー小売価格の推移◇

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