◇絵でみる需給動向◇
EUで再燃・拡大となった牛海綿状脳症(BSE)問題は、域内の牛肉価格を大幅 に下落させたことで乳牛を含めた肉用としての牛の出荷抑制を招いた。しかし一 方では、生乳生産に思わぬ波及効果を及ぼしている。ドイツ市場価格情報センタ ー(ZMP)によると、2001年第3四半期までの生乳供給量(乳業会社などへ の出荷量)は、EU15ヵ国全体で前年同期比を0.1%上回る8,768万8千 トン(暫定値)となった。2001年の生乳供給量については、2月にイギリス で発生した口蹄疫問題が拡大するにつれ、減少は避けられないとの見方がでてい た。こうした見方の通り2001年上半期の生乳供給量は前年同期比で0.3% の減少となった。しかし、BSE問題による農家保留率の高まりにより、乳牛を中 心に上半期以降の飼養頭数が通常期よりも増加傾向にあることから、結果的に生 乳供給量は前年同期比で増加に転じている。 EUの生乳供給量(1〜9月) 資料:ZNP 注:2001年の数値は暫定値
国別の供給状況を見ると、飼養頭数の増加により供給量は各国ともに増加傾向 にある。2001年上半期では、加盟9ヵ国で対前年同期比減であったが、20 01年第3四半期ではこれが7ヵ国となり、アイルランド、ギリシャが増加に転 じている。また、主要酪農生産国の1つであるフランスでは、乳牛の農家保留が 進んだことで供給量は増加に向かいつつある。
生乳供給量が増加傾向に向かう中で主要乳製品の生産状況を見ると、好調な需 要を反映したチーズ生産の増加が目立っている。EUのチーズ生産は、EU15ヵ国 体制となった95年以降、おおむね増加傾向で推移している。また、価格につい ても、99年の輸出不振による低迷はあったものの、その後、2000年に入り 上向きに転じ、現在は堅調を維持している。これは、ファストフードの浸透など による需要の拡大や、域外向け輸出が回復に転じていることが大きな要因となっ ている。一方、好調なチーズ生産とは反対に、他の主要乳製品の生産はいずれも 減少傾向にある。中でも度重なる輸出補助金の削減や域内需要の低下による影響 がみられる脱脂粉乳生産の落ち込みが目立っている。第4四半期以降の生産状況 については、引き続きチーズ生産の増加に伴うチーズ向け生乳供給率の高まりが 予想されることから、必然的に他の乳製品生産の減少は避けられないものとみら れている。 EUの乳製品生産量(1〜8月) 資料:ZNP 注:2001年の数値は暫定値
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