◇絵でみる需給動向◇
2001年9月に米国を襲ったテロの後遺症は、米国の経済活動を停滞させる 要因となりつつあり、国内消費の落ち込みも伝えられている。豚肉の需給動向に ついては、消費を手控える動きが見られる中で緩和を予測する声も聞かれており、 価格への影響が懸念されている。米農務省(USDA)によると、2001年10月 の肥育豚価格(全米平均取引価格)は、100ポンド当たり41.8ドル(約1 13.3円/s:1ドル=123円)と、前月より100ポンド当たり5.1ド ル(約13.8円/s)も値を下げ、5ヵ月ぶりに前年同期実績を下回ることと なった(左図参照)。米国の肥育豚価格は、好調を維持した米国経済の成長に伴 う消費の拡大と、日本向けなどを中心とする輸出需要を背景として、99年8月 以降、おおむね上昇基調で推移していた。
一方で、米国経済の停滞とは別に、豚肉需給の緩和要因として、昨年来の堅調 な豚肉価格があるとの見方もある。USDAによると、2001年9月の平均小売価 格は、1ポンド当たり278.1セント(約754.1円/s)と、4ヵ月連続 して270セント台を維持し、99年8月以降、26ヵ月連続して対前年同月比 を上回った。豚肉価格が1ポンド当たり270セント台で推移することは、過去 10年間の価格動向と照らし合わせても例がなく、飛び抜けた水準といえる。し かし、このような高水準の豚肉価格は、消費者の購買意欲を阻害する要因ともな り、結果的には豚肉離れに拍車がかかる恐れもでてくる。高級部位とされるロイ ンでは、すでにその徴候がみられ始め、10月の卸売価格で見ると、前月比で1 00ポンド当たり7.7ドル(約20.9円/s)、率にして7%近くの下落を 記録している。 ◇図:豚肉平均小売価格の推移◇
USDAが10月に発表した畜産物の需給見通しの中では、堅調に推移してい る豚肉価格が養豚農家の生産意欲を刺激していることから、肉豚の飼養頭数は拡 大傾向となり、今後の豚肉生産は増加すると予測している。しかし一方では、経 済低迷により全体的な豚肉消費は落ち込むと見込まれており、好調を維持した豚 肉輸出も、国際競争が厳しさを増しつつあることから大幅な増加は期待できない とみている。この結果、USDAは需給の緩和に伴うある程度の価格下落は避けられ ないものと予測している。
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