安全性強化で豚肉販売好転を期待(中国)
穀物減産による飼料価格の上昇で収益性は低下
養豚経営に影響を与える夏収穫穀物生産量は、2001年は1億188万トンと前年
に比べ4.6%の減産となった。また、今年は、東北部などのトウモロコシ主要生
産地域での深刻な干ばつにより、作付面積がかなり減少したことから、減産がほ
ぼ決定的になっている。中でも吉林省では、5月上旬にトウモロコシの作付面積
は前年比6%の減と発表されたが、5月末に干ばつが深刻化したことで、作付し
た畑が一部放棄され、実際の作付面積は、前年同期比で8〜10%の減少と見込ま
れている。
このような減産の影響から飼料価格が上昇し、養豚の収益性判断の目安となる
肉豚と穀物の価格比が下降している。江蘇省で行われた調査によると、8月はト
ウモロコシの価格は前年同期比38.3%高の平均1.30元/kg(約19円:1元=14.
6円)となり、豚の買取り価格とトウモロコシの価格比は、1:4.42となった。
河南省では、トウモロコシ価格は前年比43.6%高の1.12元/kg(約16円)で、
価格比は1:4.74となり、これらはいずれも基準となるレベルを下回っているこ
とから、農家の養豚による収益が悪化するのは間違いないとみられる。
さらに、各地のマスコミが、給与した飼料と関連があるとされる豚肉、内臓に
よる食中毒事件を相次いで報道したことから、一部消費者の間に不安が生まれ、
一部の都市では7、8月と連続して豚肉の販売量が減少した。上海市では、豚肉
の小売量が1〜8月は前年同期比1.9%増の31万トンであったが、その内訳は、
第1四半期は6.2%増、第2四半期は3%増となったものの、7月は2.6%減、8
月は10.6%減となっている。
農場から食卓までの管理体制を強化
最近になり、各段階の政府が食肉の安全性に力を入れている。中央の国家経済
貿易委員会は、食肉類の市場でのと畜管理を強化し、不法なと畜を厳しく取り締
まる旨の通達を出した。また、国家工商行政管理総局も、食肉市場の特別取り締
まりを直ちに実施する旨の緊急通達を出した。
地方でも河南省の開封市や河北省の石家庄市などで、豚のと畜や市場に対する
管理が強化され、一連の市場整備措置が打ち出されている。また、四川省では、
消費者が病気の豚肉を買わされた場合等には賠償を求めることができるようにな
った。上海市では、「上海市食用農産物安全監督暫定法」が公布され、食用農産
物の安全のため、農場から食卓までの全過程の管理体制が強化された。こうした
取り組みに伴い、食肉の衛生面も徐々に改善をみるようになっていることから、
第4四半期の豚肉の販売は第3四半期より好転することが期待されている。
国の経済成長が進むにつれ、多くの都市、農村住民の収入は安定して増加して
おり、生活水準も徐々に向上している。今年1〜7月の全国の都市住民の可処分
所得は前年同期比5.5%増、農家の現金収入も前年同期比で4.2%増となっている。
同時に、中国の人口は毎年約1,200万人前後の割合で増加しており、都市、農村
における食肉の需要は、依然増加傾向にあることから、今後は一層安定した豚の
生産が求められるものとみられる。
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