2001年の農業所得、畜産部門は好調(米国)


畜産部門は軒並み2ケタの伸びを予想

 米農務省(USDA)は先ごろ、2001年の農業所得見通しを発表した。これによれ
ば、2001年の純農業現金所得は前年比5.7%増の608億ドル(約7兆4,784億円:
1ドル=123円)、純農業所得は同6.5%増の494億ドル(6兆762億円)と見込ま
れている。

 統計上、いわゆる農業生産者は、1,000ドル以上の年間農業生産高を有する者
と定義されており、さらに農業粗販売額や農業への従事度などにより、農村居住
農家(Rural Residence Farm)、中規模農家(Intermediate Farm)、大規模
農家(Commercial Farm)に区分される。

 農業生産者数では4割弱、農業生産高では約9割を占める中規模及び大規模農
家の部門別1農家当たり純農業現金所得を見ると、トウモロコシについては前年
比21.6%減、大豆が同16.3%減、タバコ・綿花・ピーナッツが同42.8%減と見
込まれる一方で、畜産部門については、市況の好調さなどを反映して、肉牛が同
12.0%増、肉豚が同10.1%増、酪農が同54.0%増、家きんが同23.2%増と、軒
並み2ケタの伸びが予想されている。作物類の所得減については、政府からの補
助金収入の減少のほか、肥料の値上がりなどが要因とされる。


政府の農家への直接補助金は12.6%減の見込み

 2001年の政府による農家への直接補助金については、緊急農家支援策や環境保
全関係の支払が増加するものの、農家直接固定支払単価の引き下げや、市況の回
復によるローン不足払い(LDP)の減少により、前年比12.6%の減少が見込まれ
ている。なお、2000年における政府補助金の粗現金所得に占める割合は全生産者
では15%、部門別では、穀物及び大豆24%、綿花17%、肉牛10%、肉豚9%、酪
農5%などとなっている。ちなみに、政府の直接補助金は、農地価格値上がりの
要因の1つとされており、USDAは、99年から2001年の間では、政府の補助金がな
ければ、農地価格は実際の価格より25%安くなっていたと試算している。


エネルギーコストの増加が大きな問題、大豆作付拡大の一因にも

 コストの面では、昨年来大きな問題となっているエネルギーコストの増加が肥
料の値段にも反映されてきており、例えば、2001年におけるトウモロコシの1エ
ーカー当たりの肥料コストは、前年を28.0%上回るものと見込まれている。窒素
系の肥料に利用される無水アンモニアは、天然ガスが製造コストの大部分を占め
ており、エネルギーコストの増加の影響が顕著である。

 トウモロコシや小麦では、エネルギー関連コストの比率が経営コストの4割を
超えるが、窒素系の肥料をほとんど使用しない大豆では、2割程度と見込まれて
いる。このため、USDAは、エネルギー関連コストの増加が、今年の大豆作付け拡
大の一要因と見ている。

 一方、2001年における農家の農業による負債の総額は、前年を約1%上回るこ
とが見込まれている。これが現実となった場合、9年連続で負債が拡大すること
になるものの、伸び率自体は、97年の6%から比べると落ち着いたものとなって
きている。銀行の融資については、緊急農家支援策などの政府補助金が、その決
定に影響を与えていると指摘されている。

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