◇絵でみる需給動向◇
フランスでの汚染疑惑牛肉の販売問題を発端に、域内各国への広がりを見せる 牛海綿状脳症(BSE)問題の再燃は、食肉需給のみならず政治的問題へと拡大し つつある。昨年、BSEの発生が初めて確認されたドイツでは、BSE感染の原因と疑 われる動物性飼料の使用禁止措置を実施したものの、その後の牛肉製品流通に対 する政府対応の遅れや、消費者の誤解を招いたとして、関係閣僚が辞任するなど の政治的混乱を引き起こしている。また、イタリアをはじめフランス、スペイン でも、政府の対応を不満として、肉牛生産者団体などが中心となり、何らかの補 償措置を求める動きを活発化させている。 ヨーロッパ諸国におけるBSE発生件数 資料:OIEO資料に基づく各国政府発表数値 注:2000、2001年の数値は、各国政府により集計時間が異なる
今年に入りベルギーでは既に14件のBSE感染牛が確認されるなど、今年1月から の新たなプログラムに基づきEUで実施されているBSE検査などにより、今後、各 国での発生件数の増加が予想されている。BSE発生件数の増加は、消費者の牛肉 に対する不安感をさらに増幅させるだけに、EUをはじめとして各国政府もその対 応策に苦慮している。このような中で、2000年12月の成牛価格は、クリスマスを 迎える年末需要期にもかかわらず、消費者の牛肉離れが進行した結果、EU平均で 100kg当たり113ユーロ(約12,430円:1ユーロ=110円)となった。これは、96年 にイギリスを中心にBSE問題が発生した際の価格低下以上の下落となっており、 特に、ドイツ、イタリア、スペイン、フランスの下げ幅が大きく、ドイツでは対 前月比で最大の16.8%の下落を記録している。 ◇図:EUの成牛価格動向(対前月比増減率)◇
牛肉消費の低迷で域内の牛肉需給が緩和している中、域外各国のEU産牛肉の輸 入禁止措置が、これをさらに増幅させることとなっている。EU委員会は、今年1 月からBSE感染の可能性がある30ヵ月齢以上の牛由来の牛肉について、BSE検査を 前提とした介入買い上げ措置を実施しており、およそ62万5千トンの牛肉がその 対象になるものと推測される。これは、EUの年間牛肉生産量(99年でおよそ766 万トン:枝肉重量ベース)の8%に相当するため、今後、EUの牛肉需給の改善に 寄与するものと期待される。しかし一方では、このBSE検査により感染が確認さ れたものについては、全量廃棄処分が義務付けられていることから、その廃棄方 法などをめぐって、各国での新たな問題の発生も懸念されている。
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