◇絵でみる需給動向◇
EUで再燃する牛海綿状脳症(BSE)問題の影響と年末の食肉需要期が重なり、 域内の豚肉価格は堅調に推移した。2000年12月のEU15ヵ国豚枝肉卸売平均価格 (市場参考価格)は、100kg当たり157.7ユーロ(約17,347円:1ユーロ=110円) と18ヵ月連続して前年同月実績を上回り、高値を記録した97年の水準に近づきつ つある。中でも、昨年、初めてのBSE発生が確認されたドイツをはじめ、ギリシ ャ、イタリアなどの上昇が目立っている。 一方、豚肉の価格動向に影響を及ぼす域内の豚肉供給量は、飼養頭数の減少に 伴うと畜頭数の減少や、ユーロ安で推移する為替を背景とした域外向け輸出の増 加など、昨年から減少傾向との見方が強かった。しかしながら、ここに来て豚肉 価格が上昇基調であることや、為替相場がユーロ高に転じつつあることから、域 外向け輸出が減少し、今後、域内の豚肉供給量が増加傾向で推移すると見込まれ ている。 ◇図:対ユーロ為替レートの推移◇
このように域内各国で豚肉価格が堅調に推移する中で、BSE問題再燃の発端と なったフランスでは、上昇を続ける価格に嫌気をさすかのように消費者の豚肉離 れが進みつつある。フランスの豚枝肉価格は、BSE問題が明らかとなった10月以 降上昇に転じ、11月には100kg当たり156.6ユーロ(約17,226円)と高水準を記録 したが、鶏肉や羊肉など牛肉、豚肉に代わる食材が豊富なため、年末の需要期に もかかわらず12月の価格は、イギリス、スウェーデンと同様に一転して低下した。 また、この動きとは別にドイツでは、伝統的な食肉加工製品であるソーセージ 原料として豚肉以外にも牛肉が使われていることから、BSE感染を危ぐする消費 者の不安感によりソーセージ消費が低迷しており、加工用豚肉への需要低下が懸 念されている。 ◇図:豚枝肉卸売価格の推移(市場参考価格)◇
EU統計局が発表した2000年のEU15ヵ国における農業所得見通しによると、農 業全体で対前年比平均1.3%程度の増加との見込みを立てている中で、養豚につ いては、2000年初旬からの価格上昇を反映し、記録的となる21.5%の増加を予 測している。一部、豚肉需給の緩みから価格低下の懸念はあるものの、現在の価 格水準が維持されれば、減少する域内の飼養頭数回復に向けて、養豚農家の増産 意欲を刺激する大きな材料となるものと期待される。
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