終息に向かうイギリスの豚コレラ問題


すべての移動制限措置が解除

 イギリスの農漁業食料省は1月2日、昨年8月に86年以来14年ぶりに発生した豚
コレラ問題に関し、最後まで移動制限措置が取られていたイギリス東部地域につ
いて、昨年12月30日に制限を解除したことを発表した。また、同省に設置されて
いた豚コレラに関する市民へのホットラインも、この解除に合わせて終了した。

 イギリスでの豚コレラ問題は、周辺諸国やイギリス産豚肉製品の輸入国にとっ
て、当初、深刻な事態として受け止められていたが、97年から98年にかけてオラ
ンダやスペインでの豚コレラ流行の事態を教訓としたEUの対応や、過去のBSE対
策の反省を教訓としたイギリス政府の迅速な対応が、結果的に発生からわずか5
ヵ月という短い期間での制限措置解除につながることとなった。また、豚コレラ
の発生がイングランド東部3州に限局されていたことも大きい。


合計で7万4千頭の生体豚がと畜の対象に

 今回の移動制限解除までの過程を簡単にたどってみると、昨年8月8日にイング
ランド東部サフォーク州の農場で初発生が確認されて以来、最終的に東部3州で
合計16件の発生が確認されている。この間、EU委員会は、イングランドからの生
体豚、精液、卵および受精卵の輸出禁止、また、イギリス政府も3州の移動制限
地域を対象に、介入機関を通じたと畜費用の負担や発生農家への補償措置を行っ
ている。この間、段階的に規制緩和も行われ、初発生から約1ヵ月半が経過した
9月下旬には、3州の中で最初にエセックス州北部地域での移動制限措置が解除
されている。その後、10月下旬、11月下旬と規制解除地域が拡大され、今回の最
終解除を迎えた。

 なお、今回の豚コレラに対するイギリス政府の最終的な補償総額は明らかには
なっていないが、豚コレラへの感染が確認された生体豚約4万頭強がと畜・廃棄
処分の対象となり、感染が疑われたものを含めると合計で7万4千頭がと畜され
た。


弱体化が進む国内の養豚産業

 牛海綿状脳症(BSE)問題の再燃や豚肉生産減少を受けて、域内の需給動向が
引き締まる中、イギリス政府は、各国で実施されている豚肉製品などの禁輸措置
解除に向けて、引き続き清浄化対策の推進を行うものとみられている。一方、国
内の養豚産業では、豚コレラの発生やポンド高で推移する為替動向を受け、他国
からの豚肉製品輸入が急増しており、養豚農家の経営基盤は崩壊寸前との報告も
ある。国内の養豚団体は、政府に対し新たな補償措置の実施などを要求しており、
清浄化の推進と合わせて今後の動向が注目されている。

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