酪農の振興に向けた新機関設立の動き(アルゼンチン)


生乳生産量が増加する一方、酪農経営は悪化

 アルゼンチンの生乳生産量は、91年以降施設の近代化や加工処理能力の拡大な
どを背景に、年々増加し、99年の生乳生産量は過去最高の約1,033万キロリットル
となった。一方、こうした生乳生産の増加を背景として、98年後半から国内市場
や輸出市場における価格下落傾向が一層顕著となり、99年1月には牛乳・乳製品
の主要輸出先であるブラジルの通貨切り下げによる輸出価格の下落、また国内消
費の伸び悩みなどからアルゼンチン酪農経営の危機が叫ばれていた。

◇図:アルゼンチンの生乳生産量の推移◇

◇図:アルゼンチン産牛乳・乳製品の輸出量および輸出単価の推移◇


酪農の振興に向けて新機関の設立

 こうした状況下、同国では約2年にわたり、国内生乳生産量の増加や乳製品の
国際市況の影響などによる需給バランスの不均衡を是正するため、アルゼンチン
産牛乳・乳製品の輸出振興などを目的とする新機関設立に関する法案準備を進め
ている。新機関の設立目的は、次の通りである。

@牛乳・乳製品の輸出振興および国内の需要増進
A季節的な変動が大きい生乳生産の周年化の推進
B輸出奨励などに充当するための生産者からの拠出金を原資とする基金の管理
C品質証明および原産地証明の交付
D国内供給量の安定化を図るためメーカーが生産者に対して支払う生乳最低価
 格の設定


法律成立までには引き続き審議が必要

 現在準備中の法案の内容に対して酪農業界は、次のような見解を示している。

[メリット]

@法案の精神には、乳製品の輸出国としての将来ビジョンが盛り込まれているこ
 と

A生産者間の自由競争が保証されること

[デメリット]

@同国の輸出量の割合は生産量の2割程度(99年)と低く、国内市場を重視する
 業界関係者から基金の使途について理解を求めることが困難とみられること

A政治的な駆け引きが錯そうする中、生産者から資金を引き出すことが目的との
 イメージを与えてしまったこと

 また、アルゼンチン農牧水産食糧庁(SAGPyA)が今年初めに公表した報告書
によると、同法案に対し、酪農生産者団体から拠出金の負担をめぐり数多くの反
対意見が出されており、さらに酪農生産者団体から@牛乳・乳製品価格を勘案し
生産者側とメーカー側が合意した生乳最低価格を設定すること、Aメーカー側と
の交渉力を高めるため、地方の酪農生産者団体の設立を増やすことなどの要望が
あると報告されている。

 アルゼンチン農牧協会(SRA)は昨年12月初め、報道関係者に対する声明の中
で、農業生産に対する振興活動の必要性を強調しているが、その1つとして、同
法案の早期国会通過を求めている。

 SAGPyAの報告書によれば、同法案は昨年8月に農業委員会で審議された後、商
工委員会に回されたが、その性格上、下院本会議に法案として提出される前に消
費者保護委員会、国家予算・財政委員会における事前審議が必要であるとしてい
る。今後、こうした委員会での審議を経る中で、業界内の意見の調整については
引き続き難航するものとみられている。

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