NZの2大酪農組合が合併に基本合意


巨大乳業メーカーの誕生

 ニュージーランド(NZ)の2大酪農組合(乳業メーカー)のNZデイリーグルー
プ(NZDG)とキウイは12月21日、今年6月1日をもって合併することに基本合意
したと発表した。両組合は、NZデイリーボード(NZDB)も統合して新会社(仮
称:グローバル・コーポレーション)を設立するとしており、実現すればNZの全
生乳生産量の約98%を処理・販売する巨大な乳業メーカーが誕生することになる。

 今回の合併のニュースは同日、サットン農林大臣によって発表された。過去2
年間にわたって合併交渉を進めていた両組合は、昨年3月、双方の資産評価をめ
ぐって対立し、その後決裂状態となっていたが、今回はこの評価を民間の信用調
査機関に行わせることで合意に達した。


NZDBの統合により世界販売戦略が強化

 長年にわたりライバルとして競ってきた両組合がついに合併に合意した背景に
は、乳製品の一元輸出権限を持つNZDBの組織改革問題があった。NZDBの一元輸
出については内外から強く見直しが求められているが、NZDBが世界に築いた販
売ネットワークを分割・弱体化させるのは業界全体にとってマイナスになること
が明白であり、両組合が合併して新会社を設立する以外、これを維持する方法は
なかったのである(新会社は設立後も1年間は一元輸出体制を保持するとされて
いる)。

 両組合の幹部は、NZDBを含めた新会社の設立により、これまでにも増して積
極的かつ柔軟な輸出販売戦略を展開できるようになるため、10年後には販売額を
現在の4倍に当たる300億NZドル(約1兆5,800億円:1NZドル=52.7円)に増加さ
せるとしている。ちなみに、両組合やNZDBは昨年から豪州などを舞台に積極的
な事業展開を進めているが、新会社設立後はこの動きがさらに加速されるとみら
れている。

 NZの酪農乳業は、国内総生産額の7%、全輸出額の25%を稼ぎ出す基幹産業で
あり、新会社は国内最大のマンモス企業となる。また、世界で第14位の乳業メ
ーカーともなり、1社で乳製品国際貿易の約35%を扱うことになる。このため、
新会社は国際便の多いオークランドに本社を置き、世界販売戦略の拠点とする計
画である。


新会社設立の実現までにはさまざまなハードルが

 一方、新会社の立ち上げに当たっては、クリアすべきハードルも多く残されて
いる。まず、民間信用調査機関による両組合の資産評価格差が一定範囲内に収ま
ることが条件となる(これを上回る格差で評価された場合、この合意は解消され
る)。続いて、両組合員(酪農家)全体の75%以上の賛同が必要になる。さらに、
NZDBの組織改革は、政府による法律改正の手続きも必要となる。

 そして、最大のハードルは、独占禁止を監視するNZ商務委員会(コマース・コ
ミッション)の承認を得ることである。同委員会は99年8月、両組合の合併申請
を却下している。NZDGは、国内の子会社を売却することで独占の判断を回避す
る計画だが、それでも合併の承認を得るのは難しいとみられており、政府による
特例措置(承認免除)に期待が寄せられている。

 新会社の初代会長にはNZDG現副会長のジョン・ロードリー氏が内定しているが、
実現までの道程は予断を許さないと言えよう。

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