フィリピン、豪州と肉牛・酪農技術協力を推進


小規模農家の支援と豪州産生体牛の輸入強化が狙い

 フィリピンのアンガラ農業長官は2000年11月16日、豪州の北部準州との間で、
肉牛と酪農の技術協力に関する議定書に調印したと発表した。豪州が衛生上の理
由でフィリピン産果実の輸入を禁止したことに対し、フィリピンが豪州産肥育素
牛の輸入に制限を加えたことでひずみが生じた両国関係の是正に先べんを着ける
ものとして、この技術協力は関係者の注目を集めている。

 この技術協力は、主にフィリピンにおける小規模畜産農家に対する支援と豪州
からの生体牛輸入の強化を狙ったもので、北部準州は@小規模肥育農家に関する
事業、A牛肉の規格に関する事業、B豪州産肥育素牛の導入拡大に関する事業、
C小規模酪農の発展に関する事業の4分野をサポートすることとなっている。

 このうち、同農業長官は@を通して、良好な肉牛生産を可能にするとともに小
規模飼養農家の収入増を図り、就労機会の増加によって農村地域社会の安定を目
指すとしている。また、Aでは、豪州の食肉格付け技術を生かし、フィードロッ
トやと畜場、流通過程における肉牛および牛肉の規格を確立することを目的とし
ており、フィリピンの現行システム把握のため、近々、豪州から専門家が派遣さ
れる。Bでは、フィリピンの流通部門が要求する肥育牛の仕上げ体重での出荷を
達成するため、豪州、フィリピン双方の肥育システムを一貫して監視する体制が
敷かれる。さらに、Cでは、立ち遅れているフィリピンの酪農振興のため、北部
準州から一定頭数の乳用牛が貸し出される予定となっている。


牛肉価格高騰で豪州産生体牛の輸入制限撤廃を求める声も

 フィリピンは先般、生体牛輸入を毎年、前年比で20%削減するという豪州への
対抗措置を同5%削減に緩和し、口蹄疫の清浄化が進む重要畜産地域であるミン
ダナオ島への2万5千頭の追加輸入を許可したばかりである。しかし、その後も肥
育素牛の不足による牛肉価格の高騰から、肉牛生産者や消費者からは、輸入制限
の撤廃を求める声が日増しに高くなっている。

 農業省農業統計局によると、首都マニラにおける2000年11月の牛肉価格は1kg
当たり150〜160ペソ(約375〜400円:1ペソ=2.5円)で、99年の平均価格と比較
すると、20〜28%もの大幅な上昇が見られている。アンガラ農業長官は、5%削
減措置を、豪州がフィリピン産果実の輸入を解禁するときまで継続すると明言し
ているが、輸入制限の完全撤廃を求める声の高まりを受け、政府筋は今年中にも
これを解除することをにおわせている。 


豪の技術協力、生体牛輸出再開の追い風となるか

 一方、豪州の肉牛業界にとっても、フィリピンの輸入制限措置が長引くことは
大きな痛手となる。北部準州の州都ダーウィンは、豪州随一の生体牛積み出し港
として知られ、肉牛生産者をはじめ、東南アジア向け生体牛に関係する仕事に携
わる人々も多い。在フィリピン豪州大使館は、今回の技術協力が両国間の農産物
貿易をめぐる確執が生じる以前に計画されていたとし、フィリピンの輸入制限撤
廃との関係を否定しているが、フィリピン産果実の輸入解禁が直ちに見込めない
現在、豪州が技術協力という懐柔策を持ち出してきたとする見方も強い。この協
力関係が、フィリピンの豪州産生体牛の輸入制限撤廃への追い風となるのか、今
後の展開に注目したい。

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