米国における畜産関係Eコマースの動き(続報)
本誌2000年12月号の特別レポートで、米国における農畜産物に関するEコマー
ス(電子商取引)の動向について紹介したが、今回は、その後明らかになった新
たな動きなどについて報告する。
食肉BtoBビジネスにもとう汰の波
インターネットによる食品・雑貨のオンライン販売を行っていたプライスライ
ン・ドットコムとストリームライン・ドットコムは昨年秋、その業務から撤退す
ることを相次いで発表した。廃業の理由は、いずれも資金難のためであるが、こ
うしたとう汰の波は、両社のようなBtoC(企業・消費者間取引)だけでなく、
BtoB(企業間取引)ビジネス企業にも及んできている。
特別レポートでは、食肉および家きん肉のBtoBを行う代表的なウェブサイト
の1つとして、フードUSA・ドットコム(FoodUSA.com)における取り組みを紹
介したところであるが、今年1月上旬、同社は、全米最大の食肉業界団体である
アメリカ食肉協会(AMI)との業務提携を解消し、食肉のオンライン取引業務を
縮小する意向であることが明らかになった。その背景には、財政面での問題に加
え、今後新たに食肉のBtoBビジネスを開始する予定の、IBP社、タイソン・フ
ーズ社、ゴールド・キスト社、ファームランド・インダストリーズ社、カーギル
社およびスミスフィールド社という大手食肉パッカー5社によって設立されたC
ommerce Venture社が、それぞれ取引関係のあるバイヤーに対し、フードUSA・
ドットコムを通じた取引を見合わせるよう働き掛けを行っていることも大きな理
由の1つにあるとみられている。これに対し、AMIは、フードUSA・ドットコムを
通じて会員企業のEコマースへの参加を企図していたことから失望の色を隠せな
いでいるが、今後も、別のパートナーを探し、BtoBへの取り組みを続ける意向
の模様である。
畜産物単独のBtoCの事例
また、特別レポートでは、食肉だけを専門に扱うようなBtoCは、米国ではほ
とんどない模様と報告しているが、その後の調査により、畜産物単独のBtoCウ
ェブサイトの存在が明らかになったので、その概要を紹介する。
まず、食肉関係では、食肉業界専門の情報サイトであるミーティングプレイス
・ドットコム(meatingplace.com)にウェブサイトが掲載されている食肉処理・
加工・販売を行う企業97社について見ると、うち20社が食肉製品のBtoCを実施
している。ただし、食肉パッカーによるBtoCの例は見当たらず、その大半は、
食肉卸・小売業者によるハム・ソーセージなどの加工品や総菜などを中心とした
オンライン販売であり、中には、ダチョウ肉や、鹿肉などのゲーム・ミートなど
を専門に扱うウェブサイトも存在する。
一方、乳製品については、国際乳食品協会(IDFA)の会員団体で、自社のウェ
ブサイトを有する乳製品製造企業44社を調べたところ、9社が乳製品のBtoCを
実施しており、その内訳は、オンライン販売のチーズが4社、アイスクリームが
5社となっている。チーズ・メーカーの中には、12戸の酪農家が共同で設立し、
世界最大規模の工場を持つヒルマー・チーズ・カンパニー(カリフォルニア州)
や、1,200人以上の組合員を有するアルト酪農協同組合(ウィスコンシン州)が
含まれている。なお、大手乳業メーカーのディーン・フーズ社においては、小売
店との間でEDI(電子データ交換)に基づく商品の受注・配送を行うBtoBシステ
ムが導入されている。
こうした食肉および乳製品のBtoCにおいては、クレジットカードによる代金
決済が主であり、また、商品の配達は、UPSやフェデラル・エクスプレスといっ
た専門の小口宅配業者を通じて行われている。
オーガニック畜産物のBtoC
このほか、オーガニック畜産物を生産する農場が、抗生物質やホルモン剤など
は使用していないことをうたい文句に、ホームページ上で直接商品を販売する例
も見られるところとなっている。確認できたところでは、オーガニック食肉製品
(特に牛肉)のオンライン販売を行う例が最も多く(6件)、本誌2000年9月号の
グラビアで紹介したニーマン・ランチもその1つに挙げられる。また、オーガニ
ックの牛乳や山羊乳のチーズを販売する農場もいくつか見受けられた。
以上の例によれば、畜産物単独のBtoCは、どちらかと言うと、地域限定の中
小ブランドやホーム・メイド的な商品などを扱うものが主体であると言えるが、
特に、市場規模が拡大傾向にあるオーガニック食品については、今後、その流通
チャンネルの1つとして、インターネットを活用した取引がさらに進展する可能
性もあると考えられる。
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