家きん肉の水分残留に対する規制を強化(米国)


食肉と共通の規則を制定

 任期わずかなクリントン政権による、駆け込み的な新規制の制定などの動きが
活発化する中で、米農務省(USDA)は1月9日、家きん肉の水分残留を規制する
ための連邦規則を公表した。

 食鳥処理工程においては、内臓除去後に水で洗浄され、丸どりまたは分割され
た段階で、水に浸して冷却するという方法が一般的に用いられている。この場合、
表皮や皮下組織などに水分が付着・浸透するため、これまでの規則では、洗浄・
冷却前後の重量比で8%(丸どりの場合)までの水分残留が認められていた。一
方、洗浄後、枝肉を懸垂し、冷気によって温度を下げる方法がとられる食肉(牛
肉、豚肉など)については、こうした水分の残留が認められていなかった。この
ため、アイオワ州の肉用牛および豚の生産者グループは、家きん肉は、重量が
「水増し」され、流通・販売されているとして、USDAを相手取り訴えを起こし
、最終的には、同州の連邦裁判所が97年7月に、「恣意的で一貫性がない」とし
て、規則を無効にすべきとの判決を下した。今回の規則は、この判決に従って見
直されたものであり、内臓除去後において付着・浸透した水分の残留に関し、食
肉、家きん肉ともに共通の規制が加えられることとなった。


水分残留の表示を義務付け

 具体的には、事業者が食品衛生上の基準を満たすために必要な措置として、や
むを得ない場合を除き、水分の残留は認められないというものである。しかし、
USDAは、食鳥処理工程における浸水冷却方式について、細菌の繁殖を抑制し、
と鳥後4〜8時間以内にと体温度を華氏40度(摂氏約4度)以下にまで引き下げな
ければならないという基準を効率的に満たす有効な手法であるととしている。こ
のため、USDAは、事業者が、USDA食品安全検査局(FSIS)に対し、あらかじめ
定めた方法によって収集したデータを基に、水分残留の妥当性を証明することを
条件に、水分の残留を例外的に認めるとしている。

 さらに、こうした食肉または家きん肉が商業的に取引される場合、消費者への
情報提供を図る観点から、@水分の残留がある場合には、その最大残留割合を、
A残留がない場合には、その旨をそれぞれ表示することが義務付けられることと
された。

 規則の施行は、1年後の2002年1月9日と規定されている。FSISは、施行に向け
て、関連する手続きやデータベースの整備を行うとともに、将来的には、事業者
に共通して適用される水分残留基準なども設定していくとしている。


鶏肉団体は強気の姿勢

 制度の見直しを求めてきた全国肉牛生産者・牛肉協会(NCBA)や全国豚肉生
産者協議会(NPPC)が、今回の規則の制定について、一様に歓迎の意を表明す
る中で、全国鶏肉協議会(NCC)は、水分残留に関する表示がなされたとして
も、鶏肉の売り上げにはほとんど影響を与えないとの強気の姿勢を見せている。

 ただし、NCCは、ブッシュ新政権に対し、今回の規則の見直しを求めていく
かどうかについて、業界としての態度はまだ決定されていないとコメントして
いる。

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