◇絵でみる需給動向◇
EU委員会によると、ガット年度である2000/2001年度(2000年7月〜2001年6 月)におけるEUからの輸出証明書発行ベースによる牛肉輸出量(生体牛を含む) は、第3四半期までの合計で36万6,440トンとなった。これは、年間輸出割当数 量82万1千トンに対し第3四半期までの割当数量に相当する61万5,750トンの6 割弱にとどまっている。このように輸出が大幅に減少した要因としては、EU各国 で再燃した牛海綿状脳症(BSE)問題や、今年2月のイギリスの発生を皮切りと した口蹄疫問題などが挙げられる。域外各国は、これら問題の発生を受けてEU産 牛肉を輸入禁止とし、最終的には輸出市場の9割強が閉ざされることになった。 中でも最大の輸出先であるロシアがこの動きに追随したことは、EUの牛肉産業に とって大きな痛手となっている。
このように域外への牛肉輸出が減少する一方で、域内の牛肉消費は回復の兆し が現れている。EU委員会が先般公表した牛肉市場動向に関する資料によると、5 月時点のEUの牛肉消費量(推計値)は、BSE問題が再燃する以前(昨年10月まで) の消費水準と比較して10%の減少にまで回復している。一時期、域内の牛肉消費 は最大で50%もの下落を見せただけに、輸出不振にあえぐEUの牛肉産業は、順調 な回復に胸をなで下ろしつつある。国別の消費状況を見ると、昨年末のBSE初発 生により消費が急激に落ち込んだドイツやスペイン、イタリアの回復が目立って いる。また、今回のBSE問題のきっかけとなったフランスでは、地方都市を中心 する牛肉消費の回復により、すでにEU平均と同レベルまで戻りつつある。 EUの牛肉消費(BSE問題再燃以前との比較) 資料:EU委員会
牛肉消費に回復の兆しが見える中で、域内の成牛価格については、今後、消費 回復に加え口蹄疫の沈静化により家畜の移動制限が解除されたことで、域内流通 の活発化が見込まれ、また、BSEや口蹄疫により閉ざされていた域外市場が徐々 に再開しつつあることが、市況の回復にプラス要因として働くものと期待されて いる。この一方で、価格回復策としてEUによる介入買い入れや廃棄計画などが実 施され、2001年1月からの4ヵ月間で、約18万5千トンが介入在庫となり、約20 万トンが廃棄された。このほかにイギリスでの口蹄疫発生による殺処分により、 約9万トン相当の牛肉生産が減少している。この結果、合計で47万5千トンの牛 肉が市場から排除・隔離されたが、これはEUの年間牛肉消費量の約6%に相当し ている。EU委員会では、BSEの発生が続く中で、牛肉需給のバランスを保つため には牛肉生産抑制策などが必要として、各加盟国への働きかけを強めている。 ヨーロッパ諸国におけるBSE発生件数 資料:EU委員会、OIE資料に基づく各国政府発表数値(速報値を含む) 注:2000、2001年の数値は、各国政府により集計時期が異なる
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