◇絵でみる需給動向◇
米農務省(USDA)によると、2001年第1四半期(2001年1〜3月)の牛肉輸 出量(枝肉重量ベース)は、前年同期比12.0%減の25万8千トンとなった。これ は、昨年初めに実施されたロシア向け援助輸出(4万6千トン)が今年は行われ なかったことに加え、寒波に伴う供給減による牛肉価格の高騰やアジア諸国の通 貨に対するドル高などから、日本をはじめ主要市場向けが軒並み減少したことに よる。こうした中にあって、第2の輸出先であるメキシコ向けは、前年同期比2. 6%増の6万1千トンと、主要市場の中で唯一前年水準を上回った。同国向け牛 肉輸出は、94年の北米自由貿易協定(NAFTA)発効による関税の撤廃により94年 に急増したものの、同国の経済危機を受けて95年には大きく落ち込んだ。しかし、 その後は、経済回復などによる需要の拡大に伴って順調に増加し、2000年は前年 比14.5%増の24万2千トンと過去最高を記録している。 ◇図:メキシコへの牛肉輸出◇
一方、今年第1四半期におけるメキシコ産生体牛の輸入は40万8千頭と、前年 同期を15.0%上回った。メキシコ産生体牛の大部分は、テキサス州などのフィー ドロット向け肥育素牛であることから、その輸入は、経済情勢、干ばつなどの気 象状況、生産者の経営状態などメキシコ側の事情のみならず、米国南西部の肉牛 価格とも密接に関係している。こうした背景から、95年の輸入頭数は、メキシコ が経済危機に加えて深刻な干ばつに見舞われたため、過去最高の約163万頭に達 した一方、96年から98年にかけては、メキシコ国内での牛群再構築の進展や米国 内価格の低迷などから低調に推移した。しかし、99年以降、子牛生産頭数が増加 したことや米国内価格が堅調に推移していることなどを反映して大幅に増加し、 2000年は前年比27.4%増の122万頭と、カナダを抜いて最大の輸入国となった。 ◇図:メキシコからの生体牛輸入◇
メキシコ政府は昨年4月以降、一部の米国産牛肉にダンピング防止税を課して いるが、需要が極めておう盛な穀物肥育牛肉は対象外であることから、これによ る影響はそれほど大きくない。このため、メキシコへの牛肉輸出は、今後も増加 傾向で推移すると見込まれる。また、メキシコからの生体牛輸入は、同国の経済 状況や気象条件などに左右されるものの、将来的にも主要な生体牛供給国であり 続けるとみられる。
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