アルゼンチンの牛肉消費

ブエノスアイレス駐在員事務所浅木仁志、玉井明雄


ひとくちメモ

 牛肉の国アルゼンチン。アンデス山脈から流れる豊かな水資源に潤された肥よ
くなパンパ、そこで育まれた良質な牧草を飽食する肉牛の群れ。牛にとってこの
国は天国のようだ。アルゼンチンは牛肉を中心に美味な食肉製品を味わえる代表
的な国の1つである。

 アルゼンチンの年間1人当たりの牛肉消費量は、日本の5倍強の63kgで世界一。
食肉全体では約100kgの消費量がある。
牛肉はロイン系の高級部位をステーキやローストビーフとして食することも多い
が、アサード(Asado)と呼ばれるアルゼンチン風炭火焼が代表的な消費形態で
あり、これには牛肉のみならずその臓物や食肉加工製品も一緒に調理される。最
近では価格や健康指向を反映し鶏肉消費が増え、アサードに欠かせぬ材料に上が
っている。豚肉は8割以上が加工品で消費されテーブルミートの消費は限られる。

 加工品は主にソーセージ、腸詰類が多く、欧州の食文化を受け継いでいる。ス
ーパーマーケットの食肉加工製品のコーナーには、アサードに欠かせぬチョリソ、
渦巻状のサルチッチャ(牛豚肉を原料にした腸詰)、モルシージャ(牛豚の血液、
脂肪を原料にした腸詰)を筆頭に、サラミ、各種のソーセージが所狭しと並ぶ。
加工製品は欧州からの輸入も多い。

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 大型スーパーマーケットの1つ“ジュンボ”
の食肉コーナー。ミンチやステーキ用牛肉は
パックで売っているが、日本のようなカレー
用カット肉やスライス肉はない。客の多くは
小割をさらに整形させて、ブロック単位で購
入する。

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 食肉売り場のカウンターの奥に整形処理室
が広がっている。衛生上の配慮から中には入
れなかったので入り口から撮影した。多くの
モルシージャ(上)とチョリソ(下)がぶら
下がっている。

 同じスーパーマーケットの食肉加工製品の
カウンター。チロリアンハットをかぶった店
員さんがヨーロッパの店先の雰囲気をかもし
出す。豚の骨付ハムがキロ13〜20USドル、高
級サラミソーセージがキロ11〜14USドル、そ
の他のソーセージ類はおおむねキロ12USドル
以下だった。

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 ブエノスアイレス市内の食肉加工製品の専
門店(フィアンブレリーア)店先。こうした
小売店は八百屋、果物屋、魚屋などとメルカ
ード(マーケット)を形成し地域住民に比較
的廉価な食料を提供している。しかし最近は
大規模店舗に押され、客足は減り経営は厳し
いようだ。
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 アサードに欠かせない、牛肉の切り身(プ
レート部位)。キロ5USドル。その他アサー
ドによく登場する部位はバシオ(フランク部
位)、マタンブレ(ロウズ部位)などがある。

 ビッフェデチョリソと一般に言われるサー
ロイン部位。アサードにも使うが、主にステ
ーキ用として重宝される。これでキロ6USド
ルである。
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 アルゼンチンアンガス牛肉認定プログラム
の認定を受けたアンガス牛のヒレ肉。パック
の右下に認証マークが貼付され、キロ18USド
ルと多少高めである。銘柄商品として国内で
販売される他、2万トンの牛肉関税割当枠内
で米国に輸出(現在は口蹄疫発生により輸出
を停止)されている。

 牛の臓物。左上から時計回りに、チンチュ
リンと呼ばれる小腸(キロ2ドル)、脳(キ
ロ0.8ドル)、モジェハと呼ばれる甲状腺と
胸腺(キロ10ドル)、最後はリニョンと呼ば
れる腎臓(キロ3ドル)。これらもアサード
の重要な材料。
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 パリッジャという金網の上で豪快に炭火で
焼くアサード。アルゼンチンでは週末に親戚
家族や友人が集まると主に野外でアサードを
楽しむ。塩こしょうだけのシンプルな味付け
で、全体に火が通るよう長時間じっくり焼く
のがコツである。もともとパンパの牧童(ガ
ウチョ)が草原で焼き肉をしたのが始まりと
いわれている。

 アサードの中でも、臓物の盛り合わせを主
体にしたものをパリジャーダといい、代表的
なアルゼンチン料理である。小型のパリッジ
ャで焼かれて出るのは牛肉のほか、チョリソ、
サルチッチャ、モルシージャ、チンチュリン、
モジェハ、リニョン、イガドと呼ばれる肝臓、
ウブレと呼ばれる乳房など。写真は2人前だ
がとても日本人2人では食べきれない。しめ
て20ドル。

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