◇絵でみる需給動向◇
豪州農業資源経済局(ABARE)によると、2000/01年度(7〜6月)の酪農家 の減価償却費や家族労働費を差し引いた経営収支は、マイナス9000豪ドル(マイ ナス約57万円:1豪ドル=63円)と2年連続の黒字経営から転じて赤字になると 予測している。その要因としては、飲用向け生乳価格が下落したことが挙げられ る。このため上昇傾向にあった現金収入が99/2000年度を境に減少したのに対し、 現金支出はこれまでの増加傾向を維持したため、差し引いた現金収支が減少する と予測されている。 しかし、この経営収支には、2000年7月からの酪農乳業に係る規制撤廃に伴い 酪農家に交付される酪農経営補償金は含まれていない。この金額が1戸当たり1 万4,400豪ドル(約90万円)であることから、経営収支のマイナス分を補償金で 補うことができる。
この調査は、農業生産施設評価額が2万2,500豪ドル以上のサンプル農家302戸 を対象に聞き取りを行ったものである。酪農経営の調査では、飲用向け生乳と加 工原料向け生乳の乳価に差があり、しかも酪農家によって仕向け割合が異なるた め、サンプルの取り方により必ずしも平均的な経営を反映した調査結果とはなっ ていない。 ABAREの報告によると、規制撤廃により乳価が大幅に下落したのは飲用向け生 乳であった。豪州の生乳生産の約8割が加工原料向けである。 豪州で酪農家戸数が最も多いのは加工原料向けの生乳生産を中心としたビクト リア(VIC)州で8,140戸、次いで主に飲用向け生乳生産州であるニューサウス・ ウェールズ(NSW)州が2,016戸、同じくクインズランド(QLD)州が1,784戸と なっているが、サンプル農家数はそれぞれ86戸、76戸、40戸となっており酪農経 営の実態を反映しているとは言えない。また、経営収支のマイナス分を補うとさ れている酪農経営補償金についても、ABAREの調査結果では受給総額を8年に分 割した金額を算出しているが、実際にはほとんどの酪農家が銀行ローンにより一 括で全額を受け取っている。この調査結果を見る上ではこれらの点に注意が必要 と言える。
酪農家経営を州別に見ると、乳価の下落した飲用向け生乳を中心に生産してい たNSW州やQLD州、西オーストラリア(WA)州、南オーストラリア(SA)州で は、赤字となっている。その一方で、乳価への影響が少なかった加工原料向け生 乳を中心に生産しているVIC州では前年度比11.1%増、タスマニア(TAS)州では 95.7%減と大幅に減少しているものの黒字を維持した。 これまでNSW州やWA州の経営収支が大幅な黒字を計上していたのに比べて、 VIC州での黒字幅は小さいものであった。この状態が逆転したことからも、規制 撤廃の影響がいかに大きいものであるかが示されていると言える。また、VIC州 については、前年度よりも良好な経営状態であるのに加え補償金も受けられるこ とから、規制撤廃が好影響をもたらしたとの見方もある。 州別の酪農経営(2000/01年度) 資料:ABARE「Farm Survey」 注:予測値
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