◇絵でみる需給動向◇
EU統計局は、2000年12月時点のEU加盟国における乳用経産牛の飼養頭数調査 結果を発表した。今回の調査ではギリシャの飼養頭数が未集計のためEU15ヵ国 全体の頭数発表とはならなかったが、前回6月時点の調査に引き続き、主要酪 農国の大部分は乳用経産牛の飼養頭数が減少となったことから、今後の牛乳・ 乳製品生産に少なからず影響を与えるものとみられている。EUの生乳生産は、 生乳生産割当(クオータ)制度の実施によりおおむね安定した推移を見せてき たが、1頭当たりの乳量増加に伴い飼養頭数は減少傾向が続いている。また、 農家戸数の減少や畜産を取り巻く環境問題の高まりも、減少を促す要因となっ ている。
国別の飼養状況を見ると、域内最大の飼養頭数を有するドイツでは、酪農家戸 数の減少や牛海綿状脳症(BSE)問題の再燃・拡大が影響し、前年同期に比べ17 万1千頭の減少となった。ここ数年ドイツでは、旧西ドイツ地域を中心に年間2 〜3%台で乳用経産牛の飼養頭数減少が続いている。また、イギリスでは、EUの 単一通貨ユーロに対しポンド高で推移する為替相場の影響を受けて域内からの乳 製品輸入が急増しており、国内の酪農経営は厳しさを増している。一方、域内各 国の飼養頭数がおおむね減少となる中で、イタリアでは、乳製品需要の拡大と併 せ2000〜01年度にかけての生乳生産クオータの追加配分などにより飼養頭数は増 加を続けている。
EU委員会では、2001〜02年のEU経済について3%に近い成長を維持すると予 測しており、チーズなどに対する需要は引き続き好調が見込まれている。また、 域外での消費も拡大傾向にあり、チーズを中心に乳製品輸出はさらに増えるもの とみられている。酪農経営の基となる2000年のEU各国における生乳生産者価格は、 乳製品需要の高まりや輸出拡大を反映しておおむね上昇となった。2001年もこの 傾向は続くとみられ、生産者の増頭意欲を刺激する条件は整いつつある。しかし 一方では、バター需要の低迷や畜産環境問題の高まり、また、牛海綿状脳症(BS E)問題再燃による飼養への影響など各国ともさまざまな問題を抱えているのも 事実であり、当面の飼養頭数は減少が避けられないとの見方が強まっている。 EU主要酪農国の乳用経産牛飼養頭数(2000年12月) 資料:EU統計局 注1:2000年の数値は暫定値 2:ベルギーにはルクセンブルグを含む EUの生乳生産者価格(各国平均価格) 資料:ZMP、EU統計局 注1:2000年の数値は暫定値 2:乳脂肪分3.7%のもの 3:消費税を除く
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