EU世論調査、共通農業政策の情報不足を指摘


広報活動評価の一環として実施

 EU委員会は先般、昨年実施された共通農業政策(CAP)に関する世論調査結果
を発表した。この世論調査は、2000年CAP改革採択後の農業総局広報活動評価の
一環として、昨年9月27日から11月2日まで、一般市民1万6千人、農民3千5
百人を対象に、電話による聞き取り形式で実施された。今回の調査結果では、調
査対象の一般市民および農民のうち、CAPについて聞いたことがある人は全体の
50%程度という状況で、一般市民や農民の間での情報不足が指摘された。また、
同時に情報源についての質問も行われ、テレビによる情報が大勢(一般市民:85
%、農民:66%)を占め、新聞については、農民が専門農業紙(64%)から情報
を得る一方、一般市民は主に一般紙(61%)から情報を得ていた。新たな情報源
としてインターネットを利用している人は平均で10%、国別ではオーストリア農
民の27%からギリシャ農民の2%まで幅があった。一般市民では、より若い教育
を受けた男性のインターネット利用率が平均の2倍だった。農民では、若者およ
び大規模農家のインターネット利用が比較的多かった。


食品の安全性と環境保護に高い関心

 世論の関心事項としては、食品の安全性や環境保護の重要性が高いとしている
が、一方では、農業収入や小規模農家の保護については支持率が低くなっている。
調査結果の概要は次の通りである。

・農業が重要と考えている人は全体の92%であるが、CAPについて聞いたことが
 ある人は50%であった。

・食品の安全性、環境保護、農業収入保護、国際市場における欧州農業の競争力
 など12の重要な政策目的に関する質問については、すべての事項で重要との答
 えが大勢(76〜97%)であったが、農業収入と小規模農家の保護については、
 一般市民および農民共に支持率は低かった。一方、食品の安全性と環境保護は
 優先事項と位置付けられた。

・生産補助金および市場介入の削減と直接支払いへの転換という改革の方向を両
 グループ共に支持した。しかし、63%の農民はCAPが自分のために好ましいも
 のではないと感じていた(ただし、アイルランドとデンマークの農民は例外)。

・農民の59%、一般市民の46%が農業基金(予算)を増やすべきと考えていた。
 なお、国別内訳では、デンマークが13%の支持と最低で、ギリシャの76%が最
 高だった。


政治家や専門家だけの議論ではいけないとの示唆

 今回の調査では、国際的な農業政策の情勢に対する早急な情報提供の必要性も
明らかになった。現在、EUで検討されている中・東欧諸国の加盟に関し、両グル
ープの半分は何らかの情報を得ていたが、十分な情報を得ていると答えたのは、
農民で20%、一般市民では10%にしか過ぎなかった。このため、両グループの大
半は、中・東欧諸国の加盟が今後のEU社会に大きな影響を与えるとの悲観的な見
方を強めていた。また、世界貿易機関(WTO)の貿易交渉に関しては、農民の65
%、一般市民の77%が情報を得ておらず、十分な情報を得ていると答えたのは、
両グループともにわずかな数に過ぎなかった。今回の結果を受けてEU委員会のフ
ィシュラー委員(農業・農村開発・漁業担当)は「今回の結果は、食品や農業の
将来について、政治家と専門家のみの議論に終わってはいけないということを示
している。牛海綿状脳症(BSE)問題や口蹄疫発生以降、食品や農業に対する世
論の関心はさらに高まっており、これに対応するため、バーン委員(保健・消費
者保護担当)とともにアクション・プランを立ち上げるとともに、加盟国との議
論、インターネットによる意見交換、EU議会と共同の会議を行う」と述べた。E
U委員会では、最新の動向をつかむため再度調査を実施する予定としており、加
盟各国との意見交換などを通じ、来年に予定されているCAPの中間見直しの方向
性を探るとしている

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