豪州・NZ羊産業、ラム肉貿易のWTO裁定を歓迎


米国の豪州・NZ産ラム肉に対する輸入制限は国際協定違反

 世界貿易機関(WTO)は5月1日、米国が豪州・ニュージーランド(NZ)産ラ
ム肉に対して導入している輸入制限措置について、最終的に国際協定違反とする
裁定を下した。これに伴い、WTOは、米国に対し今後60日以内に現行輸入制限措
置の見直しを行うよう指示した。

 今回の貿易摩擦は、99年に米国政府が、国内のラム肉市況が大幅に低迷した原
因が、豪州、NZからの輸入急増にあるとして、同年7月から2002年7月までの3
年間、米国国際貿易委員会(USITC)の勧告に従い、通商法203条に基づく輸入制
限措置を実施したことから始まった。米国政府が行った輸入制限措置の具体的内
容は、99/2000年(1年目)は輸入割当数量を31,851トン(通関数量ベース)、
その枠内税率9%、枠外税率40%、2000/01年(2年目、今年度)同32,708トン、
6%、32%、2001/02年(3年目)同33,566トン、3%、24%である。

 豪州とNZの輸入割当数量に対するシェアは、それぞれ53.8:46.2であり、推計す
ると豪州とNZの割当数量は1年目17,136トン:14,715トン、2年目17,597トン:
15,111トン3年目18,059トン:15,507トンとなる。


米国政府は60日以内に改善措置が必要

 このことに対し、豪州・NZ両政府は99年10月に、WTOに対し米国の措置をWTO
のルールに完全に違反するとして提訴を行った。これを受けてWTOは検討の結果、
2000年12月に米国政府の豪州・NZ産ラム肉に対する輸入制限措置は、WTO協定違
反と裁定を下した。しかし、米国政府はこの裁定を不服として、今年2月に上級
委員会に対し申し立てを行った。その後3月に聴聞会が開かれ、その結果をもっ
て5月1日の米国政府の最終的な申し立てを棄却する裁定となった。

 今後、この裁定を受け、米国政府は60日以内に何らかの改善措置を講ずること
となっており、ベール豪州貿易相とサットンNZ貿易相は、米国政府に対して可能
な限り早期に輸入制限措置を撤廃するよう、今後も強く働き掛けると述べている。

米国へのラム肉輸出量(トン)
lamb.gif (2050 バイト)
 資料:MLA、MNZ


今後のラム肉輸出拡大に期待

 豪州の羊産業は、米国の輸入制限措置下にもかかわらず99/2000年度では輸出
量で前年度比14%増の19,250トンを記録した。一方、NZの羊産業は、18ヵ月間の
輸入制限措置により約2千万NZドル(約10億4千万円:1NZドル=52円)の負
担を強いられたとされているが、今後措置の撤廃により約4,500万NZドル(23億
4千万円)の効果が期待できるとされている。

 豪州・NZの両政府、羊産業関係者は、輸入制限措置の撤廃が行われれば、豪ド
ル、NZドル安を背景にラム肉輸出が大幅に伸びるチャンスと見ており、期待を込
めて米国側の動きを注視している。

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