仏暦の年明けとともに価格騰貴(ミャンマー)


監視の緩む年明けに価格を引き上げ

 4月17日に仏暦の新年を迎えたミャンマーでは、畜産物や家畜飼料の価格が高
騰を始めた。周辺諸国では、年明けを控えた時期に食料品の需要が増し、価格が
高騰する傾向がある。しかし、ミャンマーでは国民の不満を抑え込む意味から、
この時期には当局の監視の目が厳しく、小売業者は監視の緩む年明けとともに、
一気に価格を引き上げる傾向があるといわれる。

 ミャンマーの国土面積は、約69万平方キロと日本の2倍弱、人口は約4,170万
人で日本の3分の1程度である。国土の中央をイラワジ川が南北に縦貫し、作物
生産には適した土地であるといわれる。作物の主体は米、大豆、トウモロコシな
どで、ゴマや落花生の搾油かす、フィッシュミールも豊富に生産され、濃厚飼料
の自給も可能なため、畜産物生産コストは極めて低いといわれている。同国では、
水産資源も豊富であり、雨期には魚、そして乾期には鶏肉、豚肉を中心とした畜
産物が、国民の主要なたんぱく源となっている。このため、国の機関も農業省と
は別に畜水省があり、畜産物と水産物との組み合わせによる動物性たんぱく源の
確保に努めている。

 なお、牛は役用が中心であり、食肉資源として重要視はされていない。


ミャンマーの新年は連日猛暑、鶏の疾病も多発

 ミャンマーの新年は、乾期の終わりに当たる4月中旬であり、日中の最高気温
が連日40度を超える。このため、同国の食肉資源として最も好まれている鶏には、
熱射病によるへい死が発生するほかニューカッスル病も多発し、養鶏業界に打撃
を与えている。畜水省によると、大部分の農家では、乾期の終わりにほとんどの
鶏が処分されるため、毎年、清浄化が行われていることになるとしている。
 なお、同国の2000年末現在の家畜飼養頭羽数は、牛が1,074万頭、水牛が239万
頭、ヤギと羊が合計で173万頭、豚が372万頭、鶏(地鶏)が3,442万羽、ブロイ
ラーが153万羽、卵用鶏が264万羽となっている。


年明けとともに2〜7割以上も価格が高騰

 4月17日を境とした畜産物などの価格変動は、下表のとおりとなっており、所
得水準からしても、国民生活に与える影響は甚大なものとみられている。

ミャンマーにおける仏暦の年末年始の価格変動
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 注:1チャット=約0.25円

 なお、同国の労賃(聞き取り)は、農場労働者で1ヵ月当たり平均約5千チャ
ット(約1,250円)、工場労働者で同約6千チャット(約1,500円)程度で、労働
コストは隣国タイと比べても20分の1以下であるとみられる。


通貨の実勢レートが急落する中、政府は畜産振興を推進

 同国の通貨であるチャットは、外国貿易銀行が公表している公定レートでは1
チャット=約19円だが、市中の実勢レートは1チャット=約25銭(2001年4月1
日現在)と、公定レートの約80分の1しかない。しかも、実勢レートはこのとこ
ろ急速に下落しており、4月下旬には20銭を割り込んでいる。

 同国政府は、畜産振興が急務であるとして、民間業者による畜産技術連盟の設
立・整備を急いでおり、畜産物の価格安定に向け、これがどのように機能するの
か、今後の動向が注目される。

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