取引情報報告義務化制度、多難なスタート(米)
施行直後、プログラムミスで公表価格に誤り
米農務省(USDA)は5月25日、4月3日から5月11日までの間におけるチョ
イスおよびセレクト級の牛肉カットアウトバリューおよびプライマルカットバリ
ューの公表価格に誤りがあったとして、その訂正値を発表した。カットアウトバ
リューおよびプライマルカットバリューは、部分肉の卸売価格などを、それぞれ
枝肉および主要な枝肉の構成部位(プライマルカット)に再構成した卸売指標価
格である。
今回の誤りが生じた原因については、報告された個々の部分肉価格を集計する
際に、コンピューターのプログラムミスにより、格付けされていない低級な部分
肉の価格が誤って算入されたためとみられている。このプログラムは、今年4月
2日に施行された食肉家畜取引情報報告の義務化に合わせて新たに開発されたも
のである。
プログラムミスが発見されたのは、毎年その時期にはバーベキューシーズンを
迎え、チョイス級のカットアウトバリューが値上がりし、セレクト級の価格との
差が開くのが通例であるにもかかわらず、今年はそうした傾向が現れなかったこ
とを不審に思ったUSDAが調査したことによると報じられている。
生産者団体は誤報による損害を主張
訂正されたカットアウトバリューは、当初公表されたものよりも、チョイス級
で平均2.26%、セレクト級で同0.60%、それぞれ高くなっている。生産者は、カ
ットアウトバリューを生体牛の価値を示すものとして、パッカーとの価格交渉の
参考にしていることから、全国肉牛生産者・牛肉協会(NCBA)は、今回の誤り
により、特に情報源の少ない小規模生産者を中心として、多大な損害を被ったと
主張している。
これに対して、USDAの内部検討チームを率いるキース・コリンズ首席エコノ
ミストは、5月24日に開催された下院農業委員会において、「肉牛の売買契約は、
一般に公表されているUSDAの価格情報よりも、独自のビジネス情報を利用した
さまざまなフォーミュラに基づいて行われており、USDAの公表するカットアウ
トバリューを利用して実質的に価格を取り決める契約は非常に少ない。従って、
今回の誤りによる直接的な影響は小さい」との見解を述べた。
なお、コリンズ首席エコノミストは、今後、間接的な影響も含めて、繁殖経営
体、フィードロット、パッカーなど、それぞれの部門に与えた影響を推計すると
している。また、NCBAもこの問題について、州立大学のエコノミストらと協力
して独自の調査を行うものとみられる。
生産者への被害に対する補償について、USDAは法的な根拠がないとして消極
的な姿勢を見せており、議会でも、補償を行った場合、他団体が同様の措置を求
める前例を作ると懸念する意見がある。一方、下院農業委員会のコンベスト委員
長(共・テキサス州)は、立法による補償を検討するとしている。
早くも見直しを迫られるUSDA
食肉家畜取引情報報告義務化制度については、今回の誤り以外にも、パッカー
などの企業秘密の保持を目的として導入されたいわゆる3/60ルール(報告者の
数が3社未満である場合、または1社の報告するデータが全体の6割以上となる
場合、そのデータを公表することができない)により、本来の目的を果たしてい
ないとの不満が生産者の間で高まっており、USDAはこうした問題も含めて、早く
も見直しを迫られている。
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