◇絵でみる需給動向◇
牛海綿状脳症(BSE)問題の拡大に伴う消費者の牛肉離れにより、域内の牛肉 価格が大幅に落ち込む中、EUの牛肉管理委員会は昨年12月12日、BSE対策のため の緊急会議を開催し、EU委員会の提案による牛肉介入買い上げの実施を決定した。 今回の措置は、低迷する牛肉価格の回復を主な目的としたもので、2001年3月ま での実施が予定されている。すでに今年1月中旬までに2回の介入買い上げが行わ れており、合計で2万4,101トンの枝肉が対象となっている。今後、介入買い入れ が進むにつれ、BSE問題で揺れるEU全体の牛肉需給を引き締めるものと期待され る。 ◇図:BSE対策による牛肉介入買上数量(2回合計)◇
今回のBSE問題の影響を最も受けたとみられるドイツでは、5割近くも下落し た牛肉価格の回復とBSE検査費用の削減を図るため、EU委員会の方針に基づき国 内の畜産農家から30ヵ月齢を超える肉牛40万頭を買い上げ、全頭廃棄処分にする ことを決定した。EU統計局が発表した2000年5/6月期における域内各国の飼養 動向によると、ドイツの牛飼養頭数は約916万頭(乳用経産牛を除く)とされて おり、これが実行された場合、総飼養頭数の4%強が処分対象となる。これは、 ドイツの年間と畜頭数の約1割にも当たるため、牛肉価格の回復に大きく寄与す るものとみられている。すでに各国レベルでは、フランスで約3万5千頭、アイル ランドで約1万6千頭が廃棄処分されており、ベルギー、スペインなどでも進みつ つある。EUレベルで実施させている牛肉介入買い上げは、予算負担の増加のみな らず倉庫の収容能力からも限界が生じるため、フランスに次ぐ牛飼養頭数を抱え るドイツの決定を受けて、今後、域内各国が追随するものと期待されている。 BSE問題の拡大に伴う牛肉消費の変化 資料:EU委員会 注:昨年11月と今年1月との対比
域内でのBSE対策に併せてEU理事会は2月12日、BSE対策強化のための予算 として、EU委員会から提案のあった9億7,100万ユーロ(約1,048億6,800万円:1 ユーロ=108円)の追加を承認した。この内訳は、感染の危険性の高いと考えら れる30ヵ月齢を超える牛のとう汰・廃棄計画として7億ユーロ(約756億円、牛 肉53万トン相当)、牛肉介入買い入れとして2億3,800万ユーロ(約257億400万 円)、BSE検査費として3,300万ユーロ(約35億6,400万円)となっている。今回 の承認により、2001年の農業関係予算は総額で440億ユーロ(約4兆7,520億円: 前年比7.44%増)に達することとなる。しかし、今後の対応状況によっては、 総予算額の制約から他の農産品に対する補助削減が必至となるだけに、各国での BSE問題への取り組みが注目されている。
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