タイの鶏肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○伸び悩む農家収益


農家販売価格、約2年ぶりに前年を上回る

 タイ農業協同組合省によると、2000年8月のブロイラーの農家販売価格は、前
年同月比2.9%高の1kg当たり24.1バーツ(約67円:1バーツ=2.8円)となり、98
年11月以来、約2年ぶりに前年を上回った。9〜10月も、それぞれ同32.4%高
の25.2バーツ(約71円)、同27.6%高の25.0バーツ(約70円)と3ヵ月連続で前
年を上回り、低迷が続いていた農家販売価格が回復傾向になりつつある。

 農家販売価格は、生産費が高騰した98年8月(34.0バーツ:約95円)をピーク
に下落傾向で推移したが、2000年に入ってからは上昇基調を示している。

◇図:農家販売価格の推移◇


収益の改善に期待

 しかし、販売価格から生産費を差し引いた農家の収益は伸び悩んでいる。ブロ
イラー生産農家は、97年に勃発した経済危機の影響を受けつつも、98年は通年で
ほぼ利益を確保した。しかし、農家収益は、99年以降は乱高下を繰り返し、赤字
に陥る局面も少なからず見られており、最近、好調なブロイラー生産や輸出が、
養鶏農家の経営の安定に必ずしも寄与していないことが明らかとなっている。こ
うした状況が続くことにより、生産基盤たる養鶏農家の体力低下を招くことが懸
念されるが、8月以降は農家販売価格が上昇傾向にある反面、2000年上半期の1
羽当たり生産費が45.6バーツ(約128円)と、前年通年に比べ2.5%安くなってい
ることから、今後の収益の改善が期待されるところである。

◇図:農家収益(農家販売価格−生産費)◇


生産費の上昇懸念も

 飼料費の価格動向も懸念材料の1つである。国内最大の飼料会社であるチャロ
ン・ポカパン(CP)によると、今年の大豆かすやトウモロコシ、魚粉などの飼料
費は、昨年と比較して平均5〜10%上昇すると試算されており、特に、大豆かす
は、国内需給のひっ迫から、18%の上昇が避けられないとしている。大豆かすは、
EU地域で発生している牛海綿状脳症(BSE)に配慮した動物性飼料の代替需要か
ら、需要の増加が指摘されており、タイにおける今年の価格も前年比18.3%高の
1kg当たり11.7バーツ(約33円)と大幅に上昇するとみられている。こうしたこ
とから、98年をピークに低下傾向が続いていたブロイラーの生産費も、その7割
以上を占める飼料費の上昇の影響は免れないものと思われ、このことが、前段と
は逆に、農家の収益をますます圧迫することも考えられる。

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