◇絵でみる需給動向◇
ドイツ市場価格情報センター(ZMP)によると、2000年のEU15ヵ国における生 乳供給量は、全体で1億1,480万トン(速報値)と前年を0.5%程度下回る結果とな った。EUの生乳生産は、生乳クオータの拡大や世界的な乳製品需要の高まりを背 景に、ここ数年、比較的安定した推移をみせている。2000年の生乳供給が減少し た要因としては、北部地域での天候不順に伴う飼養への影響が一部にはあるもの の、最大の要因は、イギリスでの飼養頭数減少に伴う大幅な減産とみられている。 イギリスの酪農は、EUの単一通貨ユーロに対しポンド高で推移する為替の影響に より、域内からの乳製品輸入が急増し、国内の乳製品価格や酪農経営に大きな影 響を与えている。域内の乳用経産牛の飼養頭数は、全般的に減少傾向であるが、 イギリスでの減少はこれを上回る勢いで推移している。
生乳供給量が減少に転じる中で、世界的な乳製品需要の高まりを反映して、域 内の乳製品価格はバターを除きいずれも堅調に推移している。過去最高といわれ る脱脂粉乳の価格については、需要者サイドの高値に対する反発や国際市況の変 化が影響し、1月に入り若干の低下がみられたものの、域内生産の減少により17 ヵ月連続で前年実績を上回っている。域内の介入在庫量は、2001年1月末でわず か3トン程度を残すだけとなり、需給は当面、ひっ迫傾向が続くとみられている。 また、全粉乳についても、脱脂粉乳同様、需要増に対して生産は減少傾向である ことから、価格は上昇傾向にある。さらに、チーズについては、収益面での優位 性から生産は伸びているものの、それを上回る需給により価格は同じく上昇傾向 にある。 ◇図:主要乳製品価格の推移◇
一方、バターについては、原油産出国を中心とする需要の高まりや、域内での 販売促進策の実施を受けて、昨年に入り価格は上昇傾向をみせたものの、世界的 な供給過剰や大量に抱える介入在庫を受けて、再び下降に転じている。域内では、 動物性脂肪分が敬遠されるという消費傾向の中で、バターはもはや脱脂粉乳生産 の副産物ともいわれており、今後、ロシアなどの輸入国の需要回復がみられない 限り、価格回復を促す要因は当面、現れそうにない。域内では、バターの不振か ら今年の脱脂粉乳生産の減少がすでに予想されており、チーズなどとの生産格差 がますます広がりそうである。 ◇図:バターの介入在庫量と取引価格の推移◇
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