EUの豚肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○将来を視野に入れた新たな養豚生産の動き


 

東欧地域を中心に資本投下が拡大

 EU域内では、環境問題への関心の高まりや後継者不足など、養豚をはじめとし
て畜産を取り巻く状況は厳しくなりつつある。このような中、養豚分野では、将
来的に予想される豚肉生産の減少などを視野に入れ、生産拠点や流通体系を見直
す動きが出ている。生産面では、すでにオランダなど一部加盟国での環境規制の
強化を受けて、スペインなどへ生産拠点を移す動きがある。また、最近注目され
るのが、生産コストや環境規制で優位性のある東欧諸国への投資拡大である。中
でも潜在的な豚肉の輸出能力を備え、なおかつ、EU基準の食肉処理・加工設備を
持つハンガリーでは、域内からの投資拡大や生産拠点の移行が増加している。一
方、輸出面では、将来的な豚肉輸出の減少を視野に入れ、最大の豚肉輸出先であ
るロシア市場の確保・開拓を目的に、ロシア国内の豚肉生産、加工施設に対する
直接投資の増加など、域内の養豚は徐々に変化しつつある。

 

投資を後押しする新たな貿易協定

 これら投資が増加する背景には、ここ数年内に予定されている旧東欧諸国を対
象としたEUへの新規加盟が念頭にあるのは確実である。すでに加盟を前提とした
農産物の貿易交渉が、99年3月からEUと東欧10ヵ国との間で行われており、豚肉
を含む特定の農畜産物について相互の関税を撤廃するという、いわゆる"ダブル
ゼロ"が実施される。当面は合意に基づく一定数量枠による貿易となるが、段階
的に枠の拡大が予定されており、今後、域内向けへの輸出拡大が見込まれている。
これら国々は、域内と比較した環境問題や生産コストなどでの優位性が期待でき
るだけに、将来的にはEUにおける農畜産物の生産拠点になるものとの見方もある。 

"ダブルゼロ"の対象とされる畜産物
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カギを握る動物福祉の推進

 このような中、EU委員会は今年1月、養豚に関する新たな飼養基準の見直し
を提案した。EUでは、動物福祉の推進を背景に、畜産分野全体で飼育条件の見直
しなど、動物の育成環境に配慮した取り組みが行われており、養豚などへの風当
たりは厳しさを増しつつある。今回、EU委員会が提案した飼育基準には、繁殖用
雌豚に対する飼育スペースの拡大や居住環境の改善などが盛り込まれており、今
後、提案が承認された場合、養豚経営への影響は少なくないとみられている。従
来の枠組みを越えた新たな豚肉の生産地図が広がる中で、このような規制にどの
ように対処していくのか、今後の動向が注目される。

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