アルゼンチンで電子機器を利用した家畜管理の取り組み


EUのBSE問題で家畜管理の重要性を再認識

 2000年10月末、フランスに端を発した牛海綿状脳症(BSE)問題は、その後、
域内だけでなく域外との牛肉貿易にも影響を及ぼしている。従来から、アルゼン
チンにとってEUは主要な牛肉輸出国として位置付けられていることから、今後の
この問題の動向によっては、同国の牛肉産業に少なからぬ影響が及ぶことも予想
される。アルゼンチンの畜産業界では、この問題を契機にEUが今後牛肉を輸入す
る際の衛生条件を強化し、輸出国に対して一層厳密な家畜の追跡可能性(トレー
サビリティー)を要求してくる可能性があるとみており、その対策として電子機
器を利用した家畜管理の重要性を再認識している。


電子機器を利用した家畜管理の比較試験を実施

 現在、アルゼンチンからEUへのヒルトン枠牛肉の輸出については、従来から衛
生条件として家畜のトレーサビリティーが求められている。このためアルゼンチ
ンでは、将来的な家畜管理の手段として、マイクロチップやバーコード付き耳標
(以下「耳標」)を使った、強度、精度、安全性などの比較試験を実施してきた。
まだ電子機器を利用した家畜管理は一般的に実用化されていないが、マイクロチ
ップによる家畜管理を限定的に実施している農場も見られる。

 農畜産品衛生事業団(セナサ)の実施した、マイクロチップ、耳標、ボーロ
(胃の中に入れる子器)の比較試験では、次のような結果が得られている。

・ 脱落や強度の点では、放牧主体のアルゼンチンの場合、耳標に比べマイクロチ
 ップの方が優れているが、当初言われていたほどの差はない。また、耳標でも
 丸型は脱落や損傷が少なく丈夫だった。

・ 安全性の点では、マイクロチップとボーロが劣っている。特にチップの場合、
 耳の後ろに埋め込まれたチップが牛の体内を移動し、食品などの製品に混入す
 る可能性があると指摘されている。  

・ コストの点では、チップ1個当たり2〜3ドル(約234〜351円:1ドル=約
 117円)に対し、耳標は1個50セント(約89円)以下である。チップについては
 さらに、初生牛1頭ごとに埋め込む手間とコストは相当大きいとみられている。


実用化に向けて家畜管理情報の統一化などが当面の課題

 一方、アルゼンチンでは2000年10月、生産者や食肉処理加工業者の家畜売買、
処理頭数などの虚偽の申告に対処するため、電子機器を利用した家畜管理の検討
を含めた脱税対策法が成立した。小規模生産者でも実施可能な低コストのシステ
ム開発を狙いとしている。

 ただし、脱税対策に電子機器の利用を検討する法律はできたものの、実施する
には問題が多い。特に実施主体や装着機器の選定に先立って、電子機器で管理す
べき情報の内容について政府と民間の意見が分かれている。政府は、管理すべき
情報として、畜産統計、家畜移動の追跡、衛生管理、脱税対策に必要な最小限の
データ管理を求めているのに対し、生産者など民間サイドは品種、肥育方法など
家畜取引に必要なあらゆるデータの管理を求めている。

 農牧水産食糧庁は電子機器、特にチップを利用した脱税対策には興味を示して
おらず、むしろ国立農牧取引管理事業団(オンカ)とその登録食肉処理加工業者
の管理強化が先決としている。工場側の作為的な操作がなされないよう、オンカ
と食肉処理加工施設をオンラインで結び、正確な食肉処理量をコンピュータ管理
するのが同庁の狙いのようである。

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