中央農村工作会議、2001年は農民の増収に力点(中国)
2000年の中国農業は緩やかながら発展を維持したと総括
今年1月3〜5日、中央農村工作会議が北京で開催された。この会議は、毎年
3月に開催される中国の国会とも言うべき全国人民代表大会(全人代)に先立っ
て開催され、前年の農業活動の成果を総括するとともに、全国の地方政府に対し、
その年の中央政府の農業政策や政策目標などを周知徹底させる場となっている。
会議では、2000年は記録的な大干ばつにもかかわらず、農業および農村経済に
ついて満足すべき結果が得られたとする一方、今年は新世紀に入り、農業の基礎
政策をさらに強化する必要があるとの江沢民国家主席の指示が伝えられた。併せ
て江主席の指示は、改革と科学技術の発展を通じ、農業および農村経済の構造調
整をさらに進めて農民の増収を図り、食糧の安全保障と農村部の社会安定を確保
することが重要であるともしている。
これに引き続き、具体的な事項として、温家宝国務院副総理が昨年および今年
の農業・農村工作について次のように述べた。
1 2000年は農業の基礎的地位が固まって構造調整が進み、中国の農業および農
村経済は緩やかながら発展を維持した。また、農業の企業的経営と市場化が進
展し、農村企業の収益と発展速度が増加した。
2 その一方で、農産物価格が低迷している上、販売も不調であるという状況は
根本的には改善されておらず、農民の増収が困難で、食糧生産地域ではマイナ
ス成長となっている。このため、都市部と農村部の収入格差は一層大きくなっ
た。これらは、農産物需給のアンバランスと構造的な農業および農村経済の不
合理が長期間続いた結果ともいうべきものである。
3 今後は、国として農業への支持と保護を強めていく予定であるが、農業の収
益を総合的に高め、農民の増収を図る根本的な解決策は、農業および農村経済
の構造調整を行うことである。このため、畜産業の発展を加速させて農産物の
全体的な価値を高めるなど、農村部における農産物生産の多様化を促進する必
要がある。
高い収益を見せた2000年の畜産業
この会議では、2000年における中国の畜産業の収益が、前年を上回ったことも
紹介された。
国家統計局によると、2000年上半期における農民1人当たりの現金収入は、前
年同期に比べ15元(約210円:1元=14円)の増加となったが、畜産分野ではそれ
を上回る19.5元(約273円)の増収となった。また、農業部の発表では、現在の
畜産分野の生産高は、農業総生産高の約3分の1に当たる年間4千億元(約5兆6千
億円)以上と試算され、全国の畜産業および畜産関連産業の従事者も、合計で約
1億人にも上ると言われている。一部には、畜産業による現金収入が農業収入の
半分かつ家計収入の30%以上に当たる地域もあるとされ、畜産業は、中国の農村
経済における基幹部門へと成長していることがうかがえる。
10項目の努力目標を設定
今年の会議では、昨年10月の第15期中央委員会第5次全体会議(5中全会)で草
案が承認された第10期5ヵ年計画(2001〜05年:「十五」)の内容のうち、農業
の積極的な構造調整により早期に農民の増収を図ること、食糧の総合的な生産力
を増強することなどが、陳耀邦農業部長(農相)により改めて述べられた。そし
て、農業および農村経済のさらなる発展を図るため、重点事項として次の10項目
の努力目標が掲げられた。
1 農業の構造調整を引き続き推進し、農業の基本的地位と収益を全面的に高め
る。
2 食糧生産を重視し、その収益性を高める。
3 余剰な農業労働力の他産業へのシフトを図り、増収の道を多様化させる。
4 農村部の税制改革を図り、農民の負担を根本的に軽減させる。
5 農村部への投資増により、農業および農村の基盤整備を強化する。
6 農業に関する科学技術の開発・促進と教育制度を改革する。
7 農村信用合作社(日本の信用農協に相当)を改革し、農村部における金融サ
ービスの向上を図る。
8 貧困地域への補助を強化し、農業生産と生活条件の改善を図る。
9 農業の対外開放を促進し、国際市場への参入を図る。
10 思想教育により、農村社会の全面的な進歩を促進する。
現在、中国の農業従事者は約4億7千万人で、そのうち約1億6千万人が余剰とさ
れている。市場開放後、最も大きな影響を受けるのは農業だと言われている中国
において、農村経済の活性化は重要な課題の1つでもあり、具体的な実施方針の
策定など、目標達成に向けた今後の動向が注目される。
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