米国産鶏部分肉の輸入を禁止(インドネシア)


議会が政府の米国産鶏部分肉の禁輸措置を追認

 インドネシア政府と議会はこのほど、国内の養鶏業者の保護を目的として、米
国産の鶏部分肉(もも、手羽)の輸入を正式に禁止することで合意した。政府は、
昨年6月から実質的な米国産鶏部分肉の禁輸措置を取っていたが、議会が今回こ
れに同調したことから、国全体としてのコンセンサスが得られたことになる。ジ
ャカルタ港などにはいまだ通関を許可されない米国産鶏肉が停留しており、その
成り行きが注目されていたが、この合意によって輸入通関は完全に不可能な状態
となった。

 農業省は、増加する米国産鶏肉が国内の小規模養鶏農家に打撃を与えることを
憂慮して、昨年6月以来、丸どりのみの輸入を許可している。また、輸入丸どり
は国産品と比較して高価であり、レストランや高級スーパーマーケットを通じて
流通するため、ウェットマーケット(東南アジアや中国などで、一般市民が食料
品など生活必需品を購入する伝統的な自由市場。食肉は通常、室温で取引され、
と畜直後の生鮮品が販売される)での温と体(おんとたい)流通が主流の国産品
とは、基本的に競合しないとしている。


安価な米国産鶏部分肉が貿易摩擦の火種に

 近年、安価な米国産鶏部分肉は、アセアン主要鶏肉生産国との貿易摩擦の火種
となる傾向が強い。昨年顕在化したフィリピンと米国の鶏肉貿易摩擦は、記憶に
新しいところである。従来、むね肉を好む米国は、ももや手羽といった低需要部
位の多くをロシアに仕向けていたが、ロシア経済の低迷から、輸出の仕向け先を、
経済の回復基調が鮮明となったアセアン諸国に向け始めた。これらは、米国では
低需要部位だけに安価であり、インドネシアでは、国産鶏肉価格が1kg当たり1ド
ル(約117円)であるのに対し、米国産鶏肉は同0.5ドル(約59円)とほぼ半値で
ある。また、タイにおいても、鶏肉の関税引き下げを迫る米国への反感が高まっ
ており、養鶏関係者が在タイ米国大使館前でデモ行動などを引き起こしている。


米国の輸出攻勢に、アセアンでは国境を越えた対抗運動も

 さらに、アセアン地域では、国境を越えた対抗運動も広がっており、タイ、マ
レーシア、インドネシアおよびフィリピンの養鶏協会が集結して「アセアン養鶏
業者協会」を組織、団結して米国の輸出攻勢に対抗していく体制を整えつつある。
同協会は、米国のダンピング問題に立ち向かうだけでなく、一方的に安価な鶏肉
を押し付け、衛生上の問題を挙げて東南アジア産鶏肉を一切シャットアウトして
いる米国に対し、門戸を開放するよう働き掛けていくとしている。

 また、インドネシア政府は、今回の輸入禁止措置は、米国産鶏肉についての
「ハラル」(イスラム法に則ったもの)順守の不明確さが引き金の1つとなった
と明言している。これは、人口の9割をイスラム教徒が占める同国では、生活に
不可欠な畜産物の供給に関しても、そうした社会的な背景に十分配慮すべきこと
を物語る一例と言える。

 昨年のフィリピンに続き、インドネシアも米国産鶏部分肉のボイコットに踏み
切ることとなったが、アセアン各国に対する米国の鶏肉市場開放の圧力が高まる
につれ、今後、こうした強行措置や反米感情が同域内でますますエスカレートす
ることも予測される。

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