ブッシュ米新大統領、前政権下の規則見直しを指示
駆け込み的に制定された新規則の施行を一時凍結
1月20日、米国会議事堂において、ジョージ・W・ブッシュ氏の大統領就任式が
行われ、新しい農務長官には、元農務副長官のアン・ベネマン氏が正式に任命さ
れた(ベネマン氏のプロフィールについては、本誌2001年2月号の「トピックス」
参照)。
その興奮も覚めやらぬ中、ブッシュ新大統領は、クリントン前政権が任期終了
間際に公表した連邦規則をいったん棚上げし、その必要性などについて再検討を
行うよう、ホワイトハウスの補佐官を通じて関係省庁に指示したことが明らかに
なった。
ブッシュ新大統領の指示内容によれば、原則として、・既に公布されている規
則で、まだ施行されていないものについては、60日間の一時的な施行延期措置が
とられるとともに、・今後公表が予定されている規則案についても、公表の差し
止めが求められている。
相次いだ畜産関連規則の制定
年明け後も積み残し案件の処理に追われた前政権下の米農務省(USDA)は、
1月9日公表の家きん肉の水分残留を規制するための最終規則に続いて、18日に
は小売段階などにおける食肉および家きん肉製品に関する栄養成分の表示義務化
規則案を公表した。前者は、食鳥の処理工程で浸透した水分の残留を表示した販
売などが義務付けられるものである。(詳細は、本誌2001年2月号の「トピック
ス」参照)。
また、後者の栄養成分表示に関する規則案は、昨年5月に公表された「米国民
のための食生活ガイドライン2000」の中で示された脂肪摂取量などに関するアド
バイスが適切に実践されるための、消費者への情報提供という趣旨によるもので
あり、これまで表示義務の対象とされていたハム、ソーセージなどの加工品に加
え、カット肉やひき肉といった単一原料を用いた製品にも表示が義務付けられる
というものである。表示項目は、カロリー(総量および脂肪由来)、脂質(総量
および飽和脂肪)、コレステロール、炭水化物、食物繊維、糖分、たんぱく質お
よびビタミン・ミネラル類とされている。また、一定の基準を満たす産品につい
てのみ使用が認められる「低脂肪」という表示の要件を満たさない場合にあって
も、赤身率を表示項目に含めることも認めている。
さらに、グリックマン前農務長官は任期最終日の19日、近年顕在化しているリ
ステリア菌による食中毒などの被害を食い止めるため、調理済みや半加工の食肉
・家きん肉製品の製造業者に対し、病原菌の検査義務を課す規則案を近く公表す
る予定であることを明らかにした。これは、食品の安全性確保を重要な政策課題
の1つとして掲げていたクリントン前大統領が昨年5月、USDAに策定を指示して
いたものであり、・リステリア菌の抑制措置が適切に講じられているかを評価す
るため、事業者に対して病原菌に関する環境検査を義務付けること、・リステリ
ア菌やサルモネラ菌などについての安全性達成基準(performance standard)
を設定し、事業者がそれを順守しなければならないことなどが規定されるとして
いる。
予想される規則制定反対派の巻き返し
こうした中、農業マーケティング局(AMS)は1月26日、同30日から実施に移
される予定となっていた家畜取引情報報告義務化制度の施行を、情報収集システ
ムの準備に時間がかかるという理由により、4月2日に延期することを明らかにし
た。畜産関係では、上記4つの規則以外にも見直しの対象になるものがあると考
えられ、これら規則の制定を快しとしない関係団体等のロビー活動が活発化する
ことも予想される。ベネマン新長官の下、体制も改まったUSDAが今後どのよう
な判断を下すのか、関係者の注目を集めることは間違いないものとみられる。
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