食肉チェックオフの是非をめぐる動き(米国)


米連邦地裁、豚肉チェックオフ制度の廃止に暫定禁止命令

 全米豚肉生産者協議会(NPPC)などが、豚肉チェックオフ制度廃止の差し止
めを求めた訴訟問題で、ミシガン州米連邦地方裁判所は1月19日、NPPCらの主張
を認める暫定命令を下した。これにより、米農務省(USDA)は同制度廃止のた
めの規則制定を行うことが不可能となり、この訴訟が結審するまでの間、同制度
は引き続き実施される運びとなった。

 この訴訟は、昨年8月18日から9月21日の間に豚肉チェックオフ制度の存廃をか
けて実施された肉豚生産者などによる全体投票の結果、小差で同制度が廃止され
ることとなったことに対し、同制度の実施機関であり、その存続を強く働きかけ
てきたNPPCなどが1月12日、農務長官の全体投票実施権限の無効性、投票過程の欠
陥などを理由として、その差し止めを裁判所に求めていたものである(これまで
の経緯については、本誌2000年6月号および同11月号「トピックス」参照)。

主要州および全米の投票結果
zenbei.gif (14787 バイト)
 資料:USDA/AMS


USDA、投票過程に欠陥との判断に反論

 NPPCは1月11日の投票結果発表時、大きな失望感と懸念を表明するとともに、
投票手続きの不備により、同一人物が実際の投票と不在者投票を別の郡で行うな
どの不正があったとして、その結果に疑問を呈していた。これに対して、USDAの
ヴィアデロ監査室長(Inspector General)は、投票に際して監督的な立場でか
かわった農業マーケティング局(AMS)などのほか、NPPCに対しても聞き取りなど
の調査を行ったが、そうした事実は確認できなったとして、さらに調査を続ける
根拠はないとの立場を示していた。


廃止の場合の影響を懸念、州独自の取り組みも

 裁判所の判断については、予断を許さないものの、投票結果通りに廃止となった
場合、チェックオフ(肥育豚などの市場価格の0.45%を徴収)を原資とする需要
拡大事業の中止による需要減退、これに伴う価格の低下などを懸念する声がある。
また、豚肉業界だけではなく、他の関連業界からもその影響を憂慮する見方が出
ており、例えば、米国大豆ボード(USB)は、大豆かすが豚の飼料として大量に
使用されていることから、豚肉、ひいては大豆かすの需要減退を懸念している。

 一方、各州では、廃止された場合に備えた対策の検討が行われており、全米最大
の肉豚生産州であるアイオワ州では、全米レベルの制度が導入される以前に行わ
れていた州レベルのチェックオフ制度(肥育豚などの市場価格の0.25%を徴収)
を再開することも、検討課題に挙げられている。


牛肉チェックオフの全体投票は実施されず

 こうした中、牛肉のチェックオフ制度について、USDAは1月17日、畜産マーケテ
ィング協会(LMA)が全体投票の実施をUSDAに求めていた件で、請願者の署名数
がその実施に必要とされる全米肉牛生産者数の10%以上という規定数に達し
なかったことを発表した。

 AMSのマリガン局長は、「全体投票には至らなかったものの、多くの肉牛生産
者がチェックオフ制度に疑問を抱いているのは明らかである。すべてのチェッ
クオフ事業について、生産者の支持を確認するため、5年ごとに存続の是非を問
うことを勧める」と述べた。

 同制度の実施機関である全米肉牛生産者・牛肉協会(NCBA)のホール会長は、
USDAの発表を受け、最近の牛肉需要の増加に対して同協会の果たした役割を強調
するとともに、将来に向けて生産者のために尽力するとのコメントを発表した。

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