◇絵でみる需給動向◇
EU統計局は、2001年第1四半期(1〜3月)のEU15ヵ国における成牛と 畜頭数を発表した。これによると、と畜頭数は合計で前年同期を15.8%下回 る463万1千頭となり、96年の牛海綿状脳症(BSE)問題発生時に記録して 以来の落ち込みとなった。ここ数年のEU域内の成牛と畜頭数は、96年のBSE問 題発生後における対策の実施や、経済成長に伴う域内需給の回復などにより、わ ずかながらも増加の兆しを見せてきた。しかし、2000年後半から再燃・拡大 したBSE問題の影響や、今年2月に発生したイギリスでの口蹄疫問題などにより、 域内の牛肉需給のバランスが崩れ、と畜頭数は必然的に減少せざるを得ない状況 となった。 EUの成牛と畜頭数(2001年1〜6月) 資料:EU統計局 注:(1)は3月、(2)は4月、(3)は5月までの実績
第1四半期のと畜実績を国別に見ると、オーストリア、ルクセンブルクの2ヵ 国のみが前年同期実績を上回ったに過ぎず、加盟各国は軒並み前年同期実績を下 回る結果となった。EUの主要牛肉生産国であり、今回のBSE問題再燃のきっかけ を作ったフランスでは、レストランや学校給食から牛肉のメニューが消えるなど、 牛肉消費への影響は大きなものとなった。また、EU最大のと畜頭数を誇るドイツ でも、BSE問題の再燃以降、牛肉の安全性確認に関する政府対応への不信感から、 牛肉消費の下げ幅が域内最大となるなど、需給のみならず政治的にも厳しい事態 を迎えた。さらに、オランダ、アイルランドなどに拡大した口蹄疫問題は、発生 国の需給動向に大きな影響を投げかけている。第2四半期以降のと畜動向につい ては、BSE問題に伴う価格暴落により農家保留を余儀なくされた肉牛が、徐々に 出荷されることが予想されており、牛肉需要とは関わりなく増加傾向になるもの とみられている。
一方、域内の成牛価格は、BSE問題の再燃・拡大以降、加盟各国で大幅な暴落 を記録している。ドイツでは前年同月比約4割安という最大の下げ幅を記録する 月が見られるなど、牛肉市場は大きな混乱を招いた。このため、EU委員会や各国 政府は、BSE対策や価格対策としての市場隔離などを実施したため、現在、成牛 価格の下げは止まったとみられている。EU委員会などの予測では、牛肉需給の改 善には相当の時間を要するとみており、成牛価格もほぼ横ばいの状況が続くとし ている。このような中で、大きな消費市場を抱えるドイツ、フランスなどでは、 牛肉消費が回復傾向にあるとの最新報告も出されており、価格回復の動きも見え 始めている。 ◇図:主要牛肉生産国の価格動向◇
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