ワシントン駐在員事務所 渡辺 裕一郎、樋口 英俊
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ホライゾン教育牧場の入り口付近。 総面積は875エーカー(約350ヘクタ ール)。うち515エーカー(約200ヘ クタール)の採草放牧地では、有機飼 料の生産や未経産牛の放牧育成も行 われている。2000年10月14日の開場 から2001年4月までの間に、地元の小 ・中学生などを中心として約4万5千人 が来場。 |
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有機農業が、作物の生育や牛の生理、 さらには環境保全のためにいかに有益 であるかをテーマに、飼料作物の栽培、 生乳生産、家畜排せつ物処理などの一 連の行程について学ぶことのできる教 育施設の内部。 |
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元々は米国海軍士官学校の酪農場。 不衛生な酪農家から供給された牛乳 が原因となった食中毒事件を契機に、 米農務省などの協力を得て、1915年 に当時の最先端の酪農場がこの場所 に設けられた。現在ある敷地および 建物は、ホライゾン社が99年に10年 契約で米国政府から借り受けている ものであり、施設のほとんどは当時の ものを修復して利用。 |
飼料生産に関するディスプレー。円 柱は、2年間の季節ごとのイネ科牧草と マメ科牧草の輪作や、その効果(根粒 菌によるマメ科の空中窒素固定など) について、実際の作物を見ながら理解 できるように工夫されたもの。 |
リクエストに応じて、専門のガイド が内部を説明してくれる。訪問したの は夏休みの真っただ中で、子供たちの 姿が目立った。ガイドは「この辺りで 雨が降ると、チェサピーク湾に水が流 れていく。湾の水をきれいに保つには、 化学肥料を使わず、土壌が流れなくな るように農地をきちんと利用すること も大切」と説明していた。 |
ひとくちメモ 米国では、都市部に住む人口の割合が2000年の国勢調査では8割を超え、 一般国民が農業生産に触れる機会も徐々に減少してきていると思われる。また、 有機食品の市場が大幅に拡大してきているが、実際にそれがどのように生産され ているのかと聞かれた場合、答えに窮する消費者も多いのではないだろうか。 今回紹介する消費者向けの教育牧場は、全米最大の有機食品会社であるホライ ゾン・オーガニック・デーリー社(本社コロラド州・ロングモント)が2000年10 月、メリーランド州の州都で米国海軍士官学校でも有名なアナポリスに程近い、 ガンブリルスにオープンしたもの。都市住民が酪農と触れ合い、日頃口にしてい る乳製品や有機農産物の生産などに関する知識を楽しみながら得る機会を提供す ることを目的としている。
左半分はそれぞれの昆虫が作物に有 益か、有害かをテスト形式で学べるも の。右半分は殺虫剤の種類と、これを 使用することの弊害(有益昆虫までも 駆除してしまうことなど)について説 明したもの。 |
牛の健康維持について解説したもの。 後部のマークで抗生物質を使用してい ないことを強くアピール。牛の左前足 のガラス箱に入っているのは、抗生物 質の代わりに、実際に牛に投与してい るアスピリン(解熱鎮痛薬)、イース ト(消化剤)などの医薬品。この横には、 ホルモン剤を使用していないことを説 明するディスプレーもあった。 |
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地元の4Hクラブ(農村などでの青少 年の健全な育成を図る組織)に所属す る子供たちが世話をする子牛の牛舎。 ここで飼われている子牛達は、州や郡 の農業フェアなどに出展されるものも 多いらしい。来場者が牛と触れ合うこ とのできる場所の1つ。なお、4Hとは Hands,Head,HeartおよびHealthを 表す。 |
牧場のアトラクションとして設けら れた7.5エーカー(約3ヘクタール)の トウモロコシ畑を利用した巨大迷路 (Corn Maze)。8月3日からの3ヵ月 間、金曜から日曜日にかけて一般開放 される。地元マスコミの注目も得て、 同期間中に2万5千人の人出を見込んで いる。 |
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同州ケネディビルにあるホライゾン 社直営農場。約500頭の搾乳牛をフリ ーストール・パーラー(自動離脱)方式 の牛舎で飼養。搾乳牛の負担を和らげ るため、1日4回の搾乳を行い、種付けも 人工授精によらず、雄牛を牛舎内に放 しての自然交配を行っている。飼料は 教育牧場で栽培されたものや、耕種農 家との契約栽培による粗飼料と購入の 大豆粕などの自家配合で、すべて有機 栽培されたもの。同社はアイダホ州に も直営農場を持ち、また、全米の約250 戸の酪農家とも契約して生乳を生産し、 自社のプラントで処理・加工を行って いる。 |
同社が製造、販売している商品群。 アイテム数は50種類以上で、有機の果 汁や鶏卵も手がけている。2000年度の 売上高(net sales)は1億2,720万ド ル(約153億円:1ドル=120円)で、 前年度比50%の伸びを示している。 |
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