◇絵でみる需給動向◇
豪州統計局(ABS)の発表によると、2001年6月時点のシドニーのスーパ ーマーケットにおける1リットルパックの牛乳の小売価格は135豪セント(約 89円:1豪ドル=66円)としている。この価格は、前年同月と同水準である ものの、99年6月と比較すると10.7%高、98年6月と比べると16.4% 高となっており、小売価格としては高い水準で推移していることがわかる。スー パーマーケットのプライベートブランド(PB)牛乳向けの生乳供給を巡り乳業メ ーカー間で厳しい競争が行われた結果として安価な牛乳が販売されるとみられて いたが、ABSの調査結果にはそれが現れていない。 ◇図:生乳小売価格の推移◇
2000年7月に実施された飲用乳の生産者最低価格撤廃などの規制撤廃の影 響を最も受けたとされるQLD州の酪農家団体は、2000/01年度の飲用向け 生乳の生産者乳価が規制撤廃以前の54.9豪セント(約39円)から40豪セ ント(約26円)以下へと大きく下落したことについて、乳価下落の影響は深刻 であり、260戸の酪農家が離農し、残っている酪農家も何とか持ちこたえてい る状況であるとしている。QLD州では、特に規制撤廃の影響を大きく受けた飲用 向けの仕向け割合が多く、その中でも比較的安値とされているPB牛乳への割合が 高くなっている。このような状況の中、2000/01年度の生乳生産量は前年 度比10%も減少しており、QLD州の酪農家団体は、州内の酪農乳業を立て直す ためにも一刻もはやく生産者乳価の値上げが必要であると乳業メーカーに対して 訴えた。 ◇図:飲用向け生乳の生産者乳価の推移◇
このような状況の中で、豪州最大手のスーパーマーケットであるウールワース は8月9日、同社のPB牛乳向けの生乳買い入れ価格を2001年9月より1リッ トル当たり5豪セント(約3円)値上げすると発表した。ウールワースはこの値 上げについて、酪農家の厳しい経営状況を考慮したためとしている。 これに対し、乳業メーカーのナショナルフーズは、スーパーマーケットのPB牛 乳向けの生乳供給により2000/01年度の収益は6%減少したとしている。 また、ウールワースの生乳買い取り価格の値上げ発表を受けて、2001/02 年度の収益は10%上昇すると予測しており、スーパーマーケットのPB牛乳が乳 業メーカーの経営に及ぼす影響の大きさが見て取れる。 現在は、牛乳の小売価格が高い水準にある一方で、生産者、乳業メーカーとも に収益が低下している状況である。今後は、生産者乳価、乳業メーカーの収益、 小売価格がどのように推移していくかに注目していきたい。
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