◇絵でみる需給動向◇
EU統計局は、2001年第1四半期(1〜3月)のEU15ヵ国における豚と畜 頭数を発表した。これによると、と畜頭数は合計で5,023万8千頭となり、 前年同期実績を3.4%下回ることとなった。EUの豚と畜頭数は、98〜99年 に記録した豚肉価格の暴落により域内の飼養頭数が減少したことから、若干の落 ち込みを見せていたが、その後は、好調なEU経済を背景とした活発な域内需要を 反映して、おおむね増加傾向で推移してきた。しかし、2000年にイギリスで 発生した豚コレラや、2001年にイギリスでの発生から大陸にも拡大した口蹄 疫により、当該国の肉豚市場出荷量が大幅に減少したため、全体のと畜頭数は減 少する結果となった。 EUの豚と畜頭数 資料:EU統計局 注:(1)は3月、(2)は4月、(3)は5月までの実績
第1四半期のと畜実績を国別に見ると、口蹄疫など疾病問題が発生したイギリ ス、オランダの減少が際だっている。イギリスでは、2000年8月にイングラ ンド東部の豚肉生産地帯で発生した豚コレラや、2001年2月から発生が続く 口蹄疫により一部地域で移動制限が実施されたことから、と畜頭数の減少を招く こととなった。また、イギリスの口蹄疫が飛び火したオランダでも、イギリス同 様、移動制限によると畜頭数の減少を招いている。一方、イギリス、オランダな どのと畜頭数減少で域内価格が堅調に推移したため、デンマーク、スペインなど の主要豚肉生産国では、と畜頭数の増加が目立っている。
このような中で域内の豚肉価格は、牛海綿状脳症(BSE)問題の再燃・拡大に 伴う代替需要などにより、需給がひっ迫傾向にあることから、近年の水準から見 れば比較的堅調に推移している。2001年8月のEU平均豚枝肉卸売価格(市場 参考価格)は、100s当たり170.4ユーロ(約18,744円:1ユーロ= 110円)と、2000年3月の194.7ユーロ(約21,417円)を頂点に 低下傾向を示しているものの、月別実績では99年7月から26ヵ月連続して前 年同月を上回っている。今後の豚肉価格は、口蹄疫発生により肉豚の農家保留が 進んだオランダなどの出荷増が予想されることから、堅調ながらも落ち着きを見 せるものとみられている。しかし、長引くイギリスでの口蹄疫発生や、各国で散 発する豚コレラなどの疾病問題がと畜頭数に影響を及ぼすことも懸念されており、 好調な輸出需要や域内消費を背景に需給がひっ迫傾向にある中で、今後の価格動 向が注目される。 ◇図:主要生産国の豚枝肉価格動向◇
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