EU委員会、硝酸塩指令の順守を求め違反国を警告
水質汚染防止のための対策を求める
EU委員会は7月31日、硝酸塩指令(91/676/EEC)に違反しているベルギー、
アイルランド、スペインおよびポルトガルに対し、欧州裁判所への提訴や警告文
書の送付などを行うことを明らかにした。硝酸塩指令では、家畜ふん尿などによ
る畜産環境問題への関心が高まる中で、農業から生じる硝酸塩による水質汚染防
止のための対策を各国に求めている。対策では、EU各国は、国内のぜい弱地域
(集約的農業または畜産が行われ、河川や地下水の硝酸塩汚染を招いている地域)
を特定・指定するとともに、同地域における硝酸塩汚染防止のための活動計画を
策定しなければならない。
ベルギー、アイルランドは欧州裁判所に提訴も
今回、EU委員会が公表した各国別の違反内容は以下の通りである。
1 スペイン
ぜい弱地域についての活動計画が一部地域でしか策定されていないため、欧州
裁判所は2000年4月に、同国のぜい弱地域活動計画未策定を批判する裁定を下し
た。その後、同国は9地方での活動計画をEU委員会に送付したが、カスティーリ
ャ・レオン、アンダルシア、バレンシア、バレアレス諸島については、現在も活
動計画が未策定となっている。このため、すべての地域の活動計画を策定するよ
う公式警告文書を発送することとした。
2 ベルギー
フランドル地方およびワロン地方では、硝酸塩汚染水系が正確かつ完全には特
定できておらず、また、フランドル地方の優良農業規範が、指令の要件を満たし
ていないなど、ぜい弱地域の指定と活動計画の不備が指摘された。このため、欧
州裁判所に提訴することとした。
3 アイルランド
同国は加盟国の中で唯一、ぜい弱地域を全く指定しておらず、活動計画も策定
していない。しかしながら、同国の内陸や沿岸の多くの地域で水質の富栄養化は
進行しており、同国政府の不適切な対応は明らかとなっている。例えば、養豚の
集約化が提案されている同国南部のウォーターフォード県では、硝酸塩に汚染さ
れた地下水が小規模な飲料水供給源として使われているが、この地下水の汚染源
(ぜい弱地域)は確認されていない。指令ではこのような例外を認めていないた
め、欧州裁判所に提訴することとした。
4 ポルトガル
現在まで、同国は3ヵ所の小さなぜい弱地域しか指定していないが、EU委員会
の調査によれば、このほかに大小22ヵ所のぜい弱地域の指定が必要となっている。
例えば、同国南部のアルガルヴェまたはセトゥバル地区の重要なかんがいされた
部分はぜい弱地域として指定すべきであると考えられている。EU委員会は、2000
年10月に第1回目の公式警告文書を発送し、これに基づき、同国からは追加調査
を実施するとの回答を得たが、いまだにぜい弱地域は追加指定されていないため、
第2回目の警告文書を発送することとした。
加盟国の多くで進捗に遅れ
EUの法令に加盟各国が従わない場合におけるEU委員会の手続きは、まず、法的
手続きを執る旨の公式警告文書を発送し、一定期間(通常2ヵ月)内に当該国に
意見(回答)を求める。その返答に照らし(返答の無い場合も含む)、さらに、
なぜ法令違反と考えられるかを明確にした「道理に基づいた見解(第2回警告文
書)」を発送し、一定期間(通常2ヵ月)内に当該国に法令順守を求める。それ
でも、なお従わない場合には、欧州裁判所に提訴することとなる。今回、EU委員
会により欧州裁判所への提訴や警告文書の送付などが行われるこれら各国を含め、
実際には、加盟国の多くで対策の進捗状況ははかばかしくなく、対策への予算や
人員の確保などが早急に求められている。
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