豪州・NZ、対米ラム肉の輸出拡大に期待
米国政府、輸入制限措置の解除勧告に従う
米国政府は9月1日、豪州・ニュージーランド(NZ)産ラム肉に対して導入し
ていた輸入制限措置について、11月15日に撤廃すると発表した。これは世界貿易
機関(WTO)上級委員会による当該輸入制限措置の解除勧告に従ったものである。
豪州・NZの羊肉産業では、約2年間に及ぶ紛争の終結により、今後の輸出拡大に
期待が高まっている。
99年以降、2年間の紛争に幕
今回の紛争は、99年に米国でラム市況が大幅に低迷したことに端を発した。米
国は、その原因が豪州・NZ産ラムの輸入急増にあるとして、米国国際貿易委員会
(USITC)の勧告に従い、同年7月から2002年7月までの3年間、米通商法201条
に基づく輸入制限措置を実施した。
豪州とNZ両政府は、これを不服とし、99年10月にWTOに対し米国の措置をWTO
のルールに完全に違反するとして提訴を行った。WTOはこれを受けて行った審理
の結果、2000年12月に米国政府の豪州・NZ産ラムに対する輸入制限措置は、WTO
協定違反であるとの裁定を下した。しかし、米国政府はこれを受け入れず、今年
2月にWTOの上級委員会に異議申し立てを行ったが、上級委員会は5月1日にこ
れを棄却し、8月14日までに改善措置を講じるよう米国政府に対し指示していた。
これに対して、米国政府は回答期限を過ぎた8月15日に回答を8月末に延期し今
回に至った。
豪州国内では、羊肉生産者や生産者団体が政府の米国への対応の甘さに業を煮
やし、これ以上問題の決着が遅れる場合、反政府キャンペーンを行う準備がある
ことを示唆する報道もなされ、一時緊迫した状況となっていた。
ラム飼養頭数および輸出量(99/2000年度)
資料:MLA、MZN
注:輸出量は船積みベース
豪州、NZの食肉団体では今後の輸出拡大に期待を表明
今回の発表を受け、豪州家畜生産者事業団(MLA)のバーナード部長は、制限
措置の撤廃によって1億5千万豪ドル(1豪ドル=66円:約99億円)の米国市場
が広がるとし、また、ミートNZのタイラー役員は、米国内でのラム肉の消費量を
伸ばすことが課題としながらも1億8千万NZドル(1NZドル=55円:約99億円)
の市場が広がると、それぞれの期待を表明している。
今回の一連の経過は、豪州・NZの自由貿易の理念を追求する輸出国としての立
場が受け入れられた事例であると考えられる。
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