大規模畜産への環境規制案に批判的な意見が続出(米国)


点汚染源として規制対象となる大規模畜産経営体、現行規則では1,000家畜単位以上

 米環境保護庁(EPA)は、今年1月12日の官報で、水質の保全を目的とした大
規模畜産経営体(CAFO)に対する環境対策関係規則の改正案を公示している。

 現行の規則では、点源汚染源として全国公害排出排除システム(NPDES)に
基づく許可証の取得などの義務付け対象となるCAFOに該当するか否かの家畜飼養
頭数の基準を、1,000家畜単位と規定している。この値は、畜種別では55ポンド
(約25s)以上の豚2,500頭、肥育牛1,000頭、乳用成牛700頭、採卵鶏およびブ
ロイラー10万羽(施設などにより異なる場合あり)などに相当する。一方、現行
規則では、飼養規模にかかわらず、25年に一度の発生頻度で24時間続く暴風雨に
見舞われたようなときを除き、家畜排せつ物などの廃棄物の排出がない場合、NP
DESの許可証取得が免除されるとの例外(「25年、24時間暴風雨」例外規定)が
認められている。


改正案ではCAFOの対象拡大やたい肥の土壌散布の規制強化などを提案

 公示された規則改正案では、CAFOに該当する頭数などの基準が、現行より厳し
くなっている。その基準としては、

@ 500家畜単位以上のものとする案

A 1,000家畜単位以上のものおよび300家畜単位以上1,000家畜単位未満のもの
 で、一定のリスク要因を満たすものとする案の2つが示され、さらに現行の
「25年、24時間暴風雨」例外規定の廃止も提案されている。

 このほか改正案では、CAFOに対し、

@ それらの家畜飼養現場および家畜排せつ物処理施設下の地下水と地表水との
 関連についての調査(水文学的(hydrological)調査/水文学:水の性質、
 分布、地下水源などを扱う学問)

A CAFOによるたい肥の土壌散布に当たって、土壌栄養分の検査やリン酸を基準
 に計算された許容量を超える散布の停止

なども義務付けられている。

 この規則改正案に関するパブリックコメントの受付期間は、当初5月中旬まで
とされていたが、さらに時間をかけて検討したいとの関係者からの要望を受け、
7月30日まで延長された。


畜産関係団体は合理的かつ現実的な規制改正を要請

 全米最大の生産者団体であるファームビューローは声明の中で、これらの提案
について、州レベルの取り組みが存在するにもかかわらず、連邦政府がさらに規
制を重ねることは不必要であり、生産者に不公平な負担を強いるものと批判した。
そして、土壌栄養管理や非点源汚染源により汚染された地表流水の問題について
は、「誘引」に基づく政策を実施するようEPAに要請した。

 垂直的調整で大規模化の進む養豚業界からは、全国豚肉生産者協議会(NPPC)
が、食料・農業政策研究所(FAPRI)による経済的な影響分析を含む詳細なコメ
ントを提出した。この分析によると、不浸透性のラグーンを設けるコスト増など
により、中西部や東海岸中部のかなり多くの養豚経営体が廃業に追い込まれる可
能性が高くなるとしている。NPPCは、規則改正案の目的は支持するが、その方法
は、経済的にも合理的で実施可能なものとしなければならないとしている。

 全米肉牛生産者・牛肉協会(NCBA)も、改正案は実際的でなく、複雑で混乱を
与えるとする声明を発表した。NCBAは、目的を達成するための計画を州が策定す
ることを認めることや、たい肥に関する管理方法は、州による環境の違いを考慮
するようEPAに提言している。

 改正案は、これらを含む多数のコメントを検討した後、2002年12月に最終規則
として決定され、2003年1月に公布される予定となっている。

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