牛肉の原産国表示をめぐる動きが活発化(米国)


現行制度では基本的に原産国表示は任意

 現在、米国においては、輸入産品がそのままの形態で販売されるような場合を
除き、家畜および食肉製品に対する原産地や原産国の表示義務は課されていない。

 ただし、米国内で生産、飼養、と畜および処理・加工された牛および牛肉製品
の場合、米農務省(USDA)食品安全検査局(FSIS)の規則に基づき、「US(品
種名:アンガスなど)」、「USAビーフ」、「(州名:カンザスなど)ビーフ」
といった表示を任意に行うことは可能である。また、同省農業マーケティング局
(AMS)で、関係業者の求めに応じて、こうした表示の正当性を認証する任意の
プログラムも実施されている。

 このほかにもう一つ、「USA産(Pro‐duct of the U.S.A.)」という任意の
表示も認められている。これは、主に輸出産品について適用されているが、例え
ば他国からの輸入生体牛でも、と畜や処理または加工が国内で施されてさえすれ
ば、「USA産」と表示し、国内市場で販売することも可能であるとされている。


生産者は表示義務化や独自の認証プログラムの創設を提言

 これに対し、全国肉牛生産者・牛肉協会(NCBA)は、現行制度は不十分である
として、@原産国表示の法的義務化を議会に要請する一方で、AUSDAに対しては、
義務化に反対するアメリカ食肉協会(AMI)などの関係団体との連名で、国内で
最低100日間育成・肥育された牛由来のものに限り、「ビーフ:メイドインUSA」
の表示が適用できるという任意の認証プログラムを別途設けるよう求めている。

 一方、NCBAのような組織的な取り組みとは別に、一生産者による自発的な動き
も見られる。これは、関係業者からの参加費を原資とする、「米国内で生産・飼
養された牛肉(Beef: Born & Raised in the USA)」という表記入りの星条旗
をあしらったロゴマークの認証プログラムであり、先ごろ行われたNCBAの会合で、
カリフォルニア州の繁殖・育成経営者がそのアイデアを披露した。


政府は現行制度における国産牛肉の定義の明確化を提案

 こうした中で、FSISは、昨年10月に出された議会の指示に従い、現行の任意表
示制度についての新たな規則案に関する事前公告を行った。その内容は、公告か
ら10月9日までの約60日間に、以下の4つの質問事項に対するパブリックコメン
トを募集するというものである。

 質問1 米国内で肥育された牛ではあるが、生産や育成は他国内で行われたも
    のについても、表示の上で米国産と見なすべきかどうか。

 質問2 牛および生鮮牛肉製品が米国産であることを、最も的確かつ適切に知
    らしめる表示用語とは何か。

 質問3 事実に即した的確な表示が行われることを確保するため、FSISにおい
    ては、どのような認証プログラムが必要か。

 質問4 こうした表示に関する消費者の理解を促進するため、関係業界および
    FSISはどのような方法をとることができるのか。

 現在のところ、これに対するNCBAの公式見解は明らかにされていない。議会で
は、NCBAの求める原産国の義務表示を法制化しようとする動きもある反面、その
信頼性確保のためには、義務的な牛の個体識別(ID)制度を一体的に導入すべき
であるとの強硬意見もある。しかし、NCBAは自主的ID制度の創設を志向している
ことから、当面、原産国表示については任意表示制度の充実を図ることが、NCBA
にとっての現実的な選択肢であると言えるだろう。

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