◇絵でみる需給動向◇
EU委員会は2001年7月、2001〜08年までの主要農畜産物についての需給に関 する見通しを公表した。豚肉需給などに関する概要は以下のとおりである(需給 に関する見通し策定に当たっての前提条件等については、牛乳・乳製品需給動向 のEUの欄−参考−を参照)。
2000年末に発生したEUの牛海綿状脳症(BSE)問題の再燃・拡大は、96年にイ ギリスで発生したBSE問題と同様に、代替需要としての豚肉消費を増加させ、豚 肉価格の上昇を招くこととなった。2001年の豚肉生産については、イギリスを中 心に発生した口蹄疫による影響が懸念されたが、魅力的な価格水準により生産が 刺激され、2001年の第4四半期までには域内各国でいずれも増産に転じるとみら れる。このため、短期的な生産見通しについては、過去に高い生産を記録した19 96年から97年にかけての水準まで回復することは難しいものの、2001年後半から の増産により2%台で増加することが見込まれる。また、中・長期的見通しでは、 域内を中心とした豚肉消費が引き続き好調とみられ、緩やかな伸びで推移すると 予測される。一方では、BSE問題に端を発した動物性飼料の使用禁止など、新た な生産コストの上昇が不安定要素として懸念されている。
域内の豚肉消費については、BSE問題の再燃・拡大により牛肉消費の落ち込み が大きかったことから、その代替需要により2001年以降も増加傾向で推移すると みられ、短期的には約2%近い伸びが期待される。中・長期的な見通しでは、鶏 肉などの食肉需要が台頭するものの、EU全体の食肉需要拡大に合わせて引き続き 緩やかな伸びが期待できる。このため、EU域内における1人当たりの年間豚肉消 費量は、2000年の43.4sから2008年には46.1sへと6%を超える伸びが期待さ れる。EUの食肉消費は、豚肉がその中心を占めており、2001年において食肉消費 全体の約5割となっている。また、以上の需給動向から今後の豚肉価格の動向に よっては、より一層の増加も期待できる。
2001年のEU域外向けの豚肉輸出については、域内での好調な豚肉消費と口蹄疫 発生による輸出停止などの影響を受けて、大幅な減少は避けられないとみられる。 しかし、中・長期的な見通しでは、成長を続ける国際市場での豚肉取引の増加が 予測され、EU産豚肉の市場規模はさらなる拡大が期待できる。一方、EU域外から の豚肉輸入については、大きな変化は見られないが、EU加盟候補国との貿易協定 により、中期的には緩やかに増加するものとみられる。 EUにおける豚肉需給の長期見通し 資料:EU委員会 注:枝肉重量ベース
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