米国の豚肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○変化の兆しが見られる生体豚・豚肉貿易


国内の需要増などから、カナダ産生体豚輸入が増加

 米国ではこのところ、カナダからの生体豚輸入が増加傾向を見せている。近年
におけるカナダからの生体豚輸入の特徴としては、輸入総頭数そのものが年々増
加していることに加え、総頭数に占める生体重50s以下の肥育素豚の比率が増加
していることが挙げられている。

◇図:カナダからの生体豚輸入の推移◇

 今年1〜5月のカナダからの生体豚輸入総頭数は前年同期比26.6%増の208万
5千頭で、1ヵ月当たり41万7千頭となっている。また、6月24〜30日の週に
おける輸入頭数は過去最高の11万1,155頭を記録し、うち肥育素豚は69,950頭
(シェア62.9%)であった。ただし、豚の導入からと畜までの間の時間的なずれ
はあるものの、2000年のカナダからの生体豚輸入総頭数は、米国の豚と畜頭数の
4.4%を占めるにとどまっており、2001年1〜5月でも同水準となっている。

 カナダからの生体豚輸入が急増している要因には、

@ 米国の飼料安から、カナダ産肥育素豚の主要な導入地域であるアイオワ、カ
 ンザス、ミズーリ、ネブラスカなど、中西部各州の肥育豚農家の生産意欲が向
 上したこと

A カナダドル安が輸出に有利に作用したこと

B カナダの豚肉輸出増加戦略の下で、同国のパッカーが豚肉処理加工場の機能
 を拡大したことから、カナダ産のみならず米国産肥育豚の需要も高まり、これ
 に伴って米国の肥育豚農家によるカナダ産素豚の需要が高まったこと

などがあると言われている。


EUの口蹄疫などの影響で日本向け輸出が急増

 北米地域内での貿易の拡大の一方、牛海綿状脳症(BSE)や豚コレラ、口蹄疫
など、欧州をはじめ各地で相次いで発生する家畜感染症の影響などから、北米産
豚肉の対日輸出が伸びている。特に、今年2月下旬にイギリスで口蹄疫が発生す
ると、家畜防疫上の理由から、欧州産豚肉の代替として北米産豚肉への輸入シフ
トが見られた。2月以降、米国産は毎月、前年同月比で3〜6割増、カナダ産も
5割増〜2倍以上の輸入となっている。上半期(1〜6月)で見ると、米国産は
前年同期比36.2%増の12万7千トン(部分肉ベース、以下同じ)、カナダ産は60
.4%増の8万1千トンとなった。

◇図:日本における北米産豚肉輸入量の推移◇


日本で関税の緊急措置が発動

 このような豚肉の輸入急増に伴い、日本では2001年度第1四半期(4〜6月)
の豚肉等の総輸入量が18万9,955トン(発動基準数量は18万3,850トン)となり、
豚肉等に係る関税の緊急措置が発動された。

 米農務省(USDA)のレポートや現地報道などによると、米国の関係者の間では、

@ 緊急措置の発動により、米国産豚肉の対日輸出に重大な影響が及ぶことはな
 いとの見方が主流となっているが、価格の上昇によって豚肉の国際市場にゆが
 み

A 緊急措置の発動による基準輸入価格の引き上げに対応して、輸出業者は部位

 などの組み合わせの変更を余儀なくされること
などの影響があるとされている。しかし一方では、米国やカナダのアナリストの
中には、今年後半には、日本向け豚肉輸出が前年に比べ大きな落ち込みを見せる
可能性があると指摘する声もあり、今後の動向が注目される。

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