スコットランドのO157対策委員会、報告書を公表
状況分析や予防のための勧告を盛り込む
スコットランドの大腸菌O157に関する対策委員会はこの程、O157に対する状
況分析や予防のための勧告を盛り込んだ報告書を公表した。スコットランドでは、
毎年、数百人に上るO157感染が報告されており、国内のほかの地域に比べ感染率
が高い。特に、若年層を中心に野外活動や家畜との接触が原因とされるものが目
立っている。このため、感染防止に向けた対策が求められていた。今回公表され
た報告書のうち、主に家畜および畜産物に関する総論は以下の通りである。
・大腸菌O157は牛、めん羊の腸に通常、認められるが、人に感染することはまれ
である。
・家畜などとの接触後、手洗いを励行することが簡単で重要な予防法である。
・衛生上の警告を定期的に繰り返すことが必要である。
・大腸菌O157の人への感染の主な原因は牛とめん羊であり、その新鮮なふん便が、
O157を感染させる危険性が最も高い。
・年齢の低い子供のO157感染は、最も危険である。
・現在の感染例では、食品が原因である場合よりも、環境(動物のふん便との接
触、水の汚染など)が原因である場合が多い。
家畜からの排除は難しく、認識と予防が必要
報告書では、大腸菌O157の調査について、一般的なばく然とした調査を行うよ
りも、むしろ、的を絞った組織的な調査と、感染経路の確認が重要としている。
また、家畜飼養については、現在のところ、O157を家畜から排除することは難し
いことから、以下のような認識と予防策を取ることを必要としている。
・すべての牛、めん羊がO157を排出すると想定すべきである。
・農民は、家畜(牛、めん羊)をO157から防ぐことはできない。
・農民および雇用者は、家畜のふん便、たい肥による危険性を認識すべきである。
・現在のところ、動物のO157保菌率を減らす直接的方法、ワクチン、飼料などの
手段は無い。
・動物のサンプル検査は危険度分析としては価値が乏しいが、特別な事例を調査
するには役立つ。(O157を見つけても、明快な対処法は無い)
・より長期的な調査、保菌率を減らす方法についての研究が必要である。
・O157は新しい病気であるため、過去に認められた個人の免疫力を当てにしては
ならない。
・農民は家族への危険に注意を払うべきである。(作業着は家庭、車では着ない
こと、家畜と使役犬を家庭、車から隔離すること)
・農民向け指導書を改定すべきである。
・農場廃棄物管理計画(スラリーの適正管理など)の活用を推進すべきである。
食品については加熱処理が重要
一方、キャンプ地などレクリエーションを通じたO157感染例も多数報告されて
おり、草地などをレクリエーションの場として利用する場合、感染の危険性を減
らすための次の処置を必要としている。
・レクリエーションの場として使用する草地などには、使用前の3週間および使
用中に家畜などを入れないこと
・家畜を退去させた以降、できるだけ早く、目に見える家畜のふん便を除去する
こと
・使用前の芝刈り
・草地などで遊んだ後の石鹸を使った手洗いの励行などを、特に5歳未満の子供
には十分指導すること
また、食品については、いまだにO157の有力な感染源であることから、近年の
諸対策に加え、次の対策を必要としている。
・加熱殺菌されていない生乳から製造されるチーズについては、(殺菌乳から製
造されるチーズと区別がつくように)消費者向けに生乳が原料である旨を明示、
および追跡可能性を改善する。
・イングランド、ウェールズにおいても、スコットランドと同じく、販売される
飲用乳およびクリームについて加熱処理を義務付ける。
・ひき肉製品については十分に加熱調理を行う。
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