アルゼンチンにおける口蹄疫問題の動向
総発生件数は1,950件に
アルゼンチン農畜産品衛生事業団(SENASA)によると、今年3月12日にパンパ
地域で口蹄疫の発生が確認されてから7月28日までの口蹄疫総発生件数は1,950
件に上っている。患畜頭数は11万3千頭に達していて、そのうちの80.4%は2歳
以下である。これを州別に見ると、6月30日現在の発表でブエノスアイレス州が
1,133件、サンタフェ州が140件、エントレリオス州が132件、ラパンパ州が105件
など、発生は肉牛の主要生産地域であるパンパが中心となっている。
SENASAでは、南部パタゴニア地域を除き、全牛群に対するワクチン接種を実施
している。第1回目のワクチン接種は終了し、第2回目のワクチン接種が7月27
日から実施されている。
海外市場の輸入停止措置により輸出量は激減
同国における口蹄疫発生後、EU,米国、チリなど主要牛肉輸出市場のほとんど
が閉鎖されている。SENASAによると、2001年1〜5月における牛肉輸出量(製品
重量ベース)は、ヒルトン枠が前年同期比47.3%減の5,400トン、生鮮肉が51.1
%減の3万2千トン、同期間における輸出額(FOBベース)は、ヒルトン枠が61.
1%減の2,787万ドル(約35億1,200万円:1ドル=約126円)、生鮮肉が50.5%
減の7,285万ドル(約91億7,900万円)となった。
海外市場で輸入停止措置が続く中、食肉輸出を行う食肉処理加工業者は、業務
の停止あるいは制限を余儀なくされている。こうした状況を踏まえ、6月1日付
け大統領令732/2001号が発令され、口蹄疫に感受性のある家畜由来の食肉およ
び内臓を輸出する食肉処理加工業者に対する税制優遇措置がとられた。同措置に
よると、99年1月に導入された推定最小所得税および金融機関からの借入金の利
子に対する租税が免税の対象となったほか、社会保障に対する雇用主負担分(一
部を除く)を付加価値税(IVA)の支払いに充当できることとなった。
早期輸出解除が待たれる中、EU家畜衛生調査団が勧告を提示
アルゼンチン牛肉業界では、輸出先として重要視するEUの牛肉等の輸入停止措
置解除が待ち望まれている。しかし、EUの家畜衛生調査団が4月末から5月上旬
にかけて実施したアルゼンチンにおける家畜衛生状況に関する調査結果について、
現地紙が6月下旬に伝えたところによると、同国で実施されている口蹄疫対策は
十分なものではないとした上で、EUによる解禁の条件としていくつかの勧告事項
が示された。同勧告の主な内容は次の通り。
@ 牛群の原産地証明と衛生証明を明確化するための効果的な家畜登録制度を実
施すること。
A 口蹄疫発生状況の把握に必要な信頼すべきデータを得るために発生源や感染
拡大について調査を続けること。
B 検体を世界口蹄疫リファレンス研究所である英国家畜研究所に送付し解析を
行うこと。
C 牛以外の偶蹄類動物をワクチン接種の対象としない理由を説明すること。
D EU向けの全認定食肉処理施設において認定要件が満たされているか検査を実
施すること。
これに対し、アルゼンチン農牧水産食糧庁の幹部筋は、口蹄疫が沈静化してい
ない現状では、EUの家畜衛生調査団による再調査の時期は定かでないものの、お
おむね年内の解禁を予想している。こうした中で、現地有力誌によると、第2回
目のワクチン接種により口蹄疫発生件数が大幅に減少するとみられるが、ワクチ
ン接種の実施が遅れ、家畜移動制限措置が徹底されなければ、EUによる輸入停止
措置がさらに長引く可能性もあるとみている。
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