日亜研究協力プロジェクトの成果に期待
国際市場での輸出競争力確保と環境保全との調和を目指す
99年から3年間の期間で国際協力事業団が国立ブエノスアイレス大学農学部と
協力して実施している「環境保全型家畜生産システム研究協力プロジェクト」は、
家畜生産と環境保全を調和させる今日的課題に取り組んだ研究協力として注目を
集め、その成果が同国の畜産業に応用されることが期待されている。
このプロジェクトは、アルゼンチン産牛肉の国際市場における輸出競争力の確
保と国内の環境保全との調和を図りつつ、
@ アルゼンチン産牛肉の肉質改良と生産性の向上
A 広大なパンパの草地を活用した環境負荷の少ない牛肉生産システムの体系の
確立
を目的としている。
草資源を活用した放牧主体の肥育が前提
牛肉生産者の多くは、国際市場において優位性のある牛肉は筋肉内に一定の脂
肪を有する柔らかい牛肉にあるとの認識を持っており、広大な草地を利用した放
牧肥育が主体であった同国においても穀物を多給するフィードロットが増加しつ
つあり、将来的には畜産環境問題を引き起こしかねない状況にある。
こうした中で、同プロジェクトは、アルゼンチンの牛肉生産は広大な草資源を
有効に活用し、放牧主体の肥育を行うことが環境への負荷を増大させない合理的
な生産システムであるとの基本的認識のもとに成り立っている。
同プロジェクトの研究課題は次のとおりである。
@ 超音波診断による肉量・肉質の評価手法の開発、選抜育種への応用
A 枝肉評価システムの構築
B 放牧管理技術並びに穀物給与が育成および肥育期間中の肉牛の肉量や肉質に
及ぼす影響
C 近赤外分光分析法による粗飼料成分の分析システムの確立
D 放牧管理と飼料構成などの違いによる放牧肥育期間中の肉牛の成長・肥育シ
ュミレーションモデルの開発
飼料穀物の給与はサプリメントとして、あくまで放牧肥育を主体とすることを
前提として構成されている。
プロジェクトは研究レベルから応用レベルへ
実際にプロジェクトを担当しているブエノスアイレス大学農学部では、ヘルシ
ーでエコロジカルなビーフ(エコビーフ)を生産するシステムとして、国際市場
で評価される一定水準の肉質を斉一性を含めて放牧肥育主体で達成するための選
抜育種と、肉質評価手法の確立に力点を置きたいと考えている。同プロジェクト
はまだ終了していないが、アルゼンチンアンガス協会は同大学と協力して、協会
が保有する種雄牛の選抜に同プロジェクトによる成果を活用する等研究レベルか
ら応用レベルに移行しつつある。
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