中国主導の飲用乳製造輸出計画が始動(豪州)


搾乳牛1,500頭規模の牧場とUHT牛乳製造工場を建設

 中国の企業グループの代表団が7月20日、豪州ニューサウスウェールズ(NSW)
州南部の小都市を訪問し、当地に大規模牧場と飲用乳製造工場を新たに建設して、
そこで生産するUHT牛乳を中国に輸出する計画に着手すると発表した。発表には
NSW州農業省の大臣らも同席し、中国企業の投資を歓迎するとともに、豪州側も
最大限の協力を行うと約束した。

 今回、NSW州南部の農業地帯リベリナ地方にあるクータマンドラ市を訪れたの
は、中国のシェンロン企業グループの代表団である。代表団のリーダーであるチ
ェン部長は、同市の周辺に搾乳牛1,500頭規模の牧場と、1日50トンのUHT牛乳
(250CCパックで20万本)を製造できる近代的な飲用乳工場を新たに建設し、当
該製品をすべて中国に航空便で輸出する計画に着手すると発表した。

 この計画に対し、シェンロン企業グループが総額1千万豪ドル(約6億5千万
円:1豪ドル=65円)の投資を行うほか、NSW州農業省とクータマンドラ市は、
必要な用地の買収や技術支援などの面で最大限の協力を行うとしている。チェン
部長、ブレイブルック市長、アメリー農業大臣の3者は趣意書に署名した後、早
速、近在の農場候補地を視察した。

 搾乳牛1,500頭規模の牧場が軌道に乗れば、1日約27トン(平均18リットル/
頭)の生乳生産が可能となるが、中国側が目標として掲げた50トン/日には不足
する。中国側は、この不足分を地元の酪農生産者から購入したいとしている。


中国の飲用乳不足がNSW州の生乳供給過剰を緩和

 チェン部長によると、中国では近年、消費者の需要が従来の還元乳から生乳を
使用した牛乳にシフトしつつあり、この結果、UHT牛乳などの飲用乳が大幅に不
足しているという。

 一方、NSW州では、昨年7月に実施された生乳流通の完全自由化以来、飲用向
け価格が大幅に下落し、多数の酪農経営者が離農の瀬戸際に立たされている。

 このため、今回の計画は、両者にとって渡りに船のタイミングで持ち上がった
ものと言えよう。現在のところ、中国側は具体的な生乳の購入価格を明らかにし
ていないが、NSW州における飲用向け生乳の極端な供給過剰状態に一石を投じ、
需給を引き締めると期待されている。


関係者の関心が高まる中国市場

 豪州は、2000年に約8万7千トンの飲用乳を輸出したが、その内訳は、シン
ガポール(2万3千トン)、香港(2万2千トン)、フィリピン(1万トン)
で、中国(4千7百トン)はそれに続く第4位であった。仮に、今回の計画が実
現すれば、1日50トン、年間約1万8千トンのUHT牛乳が中国に輸出されること
となり、中国は一挙に飲用乳輸出の大きなシェアを占めることになる。

 さらに、今回の計画で特筆すべきことは、中国側が主導して立ち上げたことで
ある。今回の事業が成功し、かつ、中国国内の飲用乳不足が今後も続くとすれば、
新たな計画が持ち込まれる可能性もあるため、関係者はその成り行きに注目して
いる。

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