飲用乳の総消費量が10年ぶりに減少(豪州)


国内需要がほぼ上限に

 豪州酪農庁(ADC)が7月10日に公表したところによると、2000/01年度(7
〜6月)の国内飲用乳総消費量は、今年3月までの累計で前年同期比1.2%減と
なり、10年ぶりに減少することが確実となった。1人当たりの飲用乳消費量は、
既に95/96年度をピークに低下しつつあるが、総消費量の減少は乳業関係者に新
たな衝撃を与えている。

 ADCによると、2000/01年度の飲用乳総消費量は、前年度の193万4千キロリッ
トルから1.2%減少して191万1千キロリットルになると見込まれている。

 飲用乳の種類別に消費動向を見ると、最も多い普通牛乳(シェア55.9%)が2.
6%減、フレーバー乳(同8.5%)は6.1%減、脂肪率1%未満の加工乳(同7.1%)
は5.6%減であるが、反対に、脂肪率1〜2%の加工乳(同18.8%)は0.7%増、
UHT牛乳(同8.6%)は1.8%増となっている。このうち、UHT牛乳の消費量の増
加は小売販売ルートの拡大に伴うものと推定されるが、脂肪率を適度に抑えた飲
用乳が消費者に支持されているという結果には興味を引かれる。

 豪州の飲用乳総消費量は、過去10年間、年率1%程度の割合で増加を続けてき
たが、ここにきて減少に転じたことは国内需要がほぼ上限に達したことを意味す
ると受け取られている。


1人当たりの飲用乳消費減少の中、消費拡大事業も縮小

 一方、1人当たりの飲用乳消費量は、99/2000年度に101.5リットルとなり、
ピークとなった95/96年度の105.5リットルから6年連続で減少を続け計3.8%
の減少になった。これは、我が国と比べれば約2.5倍に相当する高い飲用消費水
準にあるとはいえ、長期的な減少傾向は関係者にとって頭の痛いところだ。

 これについて、ADCのスポークスマン、マキュー氏は、消費拡大事業の規模縮
小が飲用乳消費を低迷させた原因のひとつだと指摘している。豪州では、昨年7
月、それまで各州の公的機関によって管理されていた飲用乳の流通販売が完全に
自由化されたが、これと同時にこれらの公的機関が廃止または縮小され、各機関
が実施していた飲用乳消費拡大事業も縮小された。ADC自身による消費拡大事業
も縮小され、これらの事業は民間の乳業メーカーに受け渡されつつある。これに
伴い、今年4月までの1年間に使われた消費拡大事業費の総額が前年に比べて26
%も減少し、中でも各乳業メーカーが独自性を発揮しにくい普通牛乳に対する消
費拡大事業費は、その割合が全体の26%から8%にまで低下したとされている。


ACCCの牛乳の小売価格調査に対し不満の声も

 現在、シドニー市内のスーパーでは、1リットル紙パック入りの普通牛乳が平
均1.15豪ドル(約75円:1豪ドル=65円)で販売されている。消費者は昨年の飲
用乳流通改革により小売価格が下がると期待したが、生産者価格が大幅に低下し
たにもかかわらず、小売価格はほとんど下がらなかった。このため、豪州消費者
競争委員会(ACCC:公正取引委員会に該当)は、酪農生産者団体の要請に応え、
飲用乳の流通販売価格が適正かどうかの調査を実施した。これによると、改革後
6ヵ月間でスーパーマーケットにおける販売利益は減少したとして、流通販売価
格は適正であると発表した。この調査について、生産者側は依然として、スーパ
ーマーケットが乳業メーカーからリベートを受け取っているとの不満を述べてい
る。小売価格が下がらない中で、豪州乳業界が消費者の牛乳離れをいかにして食
い止めるか、今後の成り行きが注目される。

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